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黒川温泉の魅力について

2012-06-01

 今年度の九州視察研修旅行の一つの目玉でもある、黒川温泉への訪問は、霧雨の中始まった。熊本市を離れ、北東の方角へ。阿蘇の大自然に触れた後、一行を乗せたバスは山深い道を登っていった。福井で言えば、一乗谷か池田町の渓流か。近隣で言えば、山中温泉にも似た風情である。

 近年の温泉ブーム、しかも女性に人気の黒川温泉ということもあり、期待に胸膨らませての訪問であった。平成21年度の調査・研究報告書に記したように、黒川温泉は旅館数20数件しかなく、しかもそのすべてが小規模旅館である。なぜ、交通の便が悪く、しかも風光明媚でもない山奥の温泉街がこんなに人気を博しているのかを探りたいと思っていた。それまで、黒川温泉についての事については、「黒川温泉のドン」と呼ばれる、新明館の後藤哲也氏の書籍を読み期待感を高めていた。中小企業診断士として、「流行る温泉」が「良い温泉」である所以をつかんでみたいと考えていた。

 黒川温泉の中でも大型の旅館(55室)である「湯峡の響き優彩」に到着した私達一行は、早速入湯手形(1,200円で3箇所まで入湯可能)を購入し、温泉めぐりを開始した。どの旅館でも、宿泊者専用の露天風呂と立ち寄り客用の露天風呂を持っているところが多い。1件目は、話題の洞窟風呂がある「新明館」。店主自らが掘った洞窟風呂は奥深くまで続き、独特の雰囲気を醸し出していた。2件目は、「ふもと旅館」。渡り廊下で川を渡って到着した露天風呂は、自然の里山風情と渓流に挟まれ、心落ち着ける風呂であった。最後に、「美里」。硫黄泉の露天風呂は、体も心もほんのり温かくさせてくれる雰囲気であった。旅館に戻り、内風呂へ入湯。竹林(これも植栽である。)の風呂あり、渓流の風呂ありで十二分に入浴を楽しんだ。温泉街の中には、良い雰囲気を持ったみやげ物店やお食事処もあり、浴衣で歩く宿泊客や風呂を楽しみに来ている地元客などで賑わいを見せていた。

 さて、これだけでは温泉を楽しんだだけ(食事のこともあるが)のレポートであり、中小企業診断士としての観点から、改めて黒川温泉の集客力に触れなければならない。それについて仮説を立ててみると、まずは「温泉街としての一体感」を強く意識している点であると考える。それぞれの旅館・みやげ物店が程よい連帯感を持っているのが感じられた。黒川温泉では組合組織でもHPや駐車場、温泉マップなどが充実している。ちょうど雨天であったため傘を借りたのだが、温泉組合のシールが張ってあり、どの旅館で忘れてきても構わないであろう事が分かる(筆者は実際忘れてきてしまった)。新明館の後藤氏の書籍にもあるように、「各旅館の風呂を廻れることで、お互いが切磋琢磨する」ことが良い方向性を持っていると感じた。今回は4つの旅館の風呂を巡ったが、それぞれの個性が風呂一つにもあふれている、そうした点も高評渓流にたたずむ黒川温泉の新明館湯めぐりの合間に土産品店をめぐる姿も価のポイントであろう。

 次には、各旅館の「ホスピタリティ」であろう。各旅館とも、入湯手形で廻る客にも丁寧な応対を見せていたし、宿泊した旅館では、湯めぐりの際に汗でびしょぬれになった浴衣を快く取り替えていただけた。食事の際も、つかず離れずの接客であり、温泉地には珍しく若い女性の接客係りが働いていた。彼女の就業動機を尋ねたところ、「接客がやりたく、こうした旅館で働いてみたかった。」とのこと。「働いてみたい」という職場が、こんな山奥の旅館ということが驚きでもある。

 さらに付け加えるならば、「雰囲気づくり」にも力を入れていると感じた。宿泊した旅館などは渓流のそばにありそれだけでも十分なのに、さらに雑木林を作り上げ、雰囲気づくりを高めている。昔の田舎の山の中を感じさせ、なんとも心休まる空間を“人工的に”作り出しているのである。

 地元福井を代表する温泉として「あわら温泉」があるが、黒川温泉とは立地条件も旅館の規模も違うため単純には良い点を吸収するわけにはいかないものの、何らかの示唆・誘客のポイント・消費者心理へのアプローチなどは参考になるであろう。これから、診断協会として地元観光業界への提案をしていく中で、再度黒川温泉の魅力について体感したことを思い返したみたい。(竹川充)

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渓流にたたずむ黒川温泉の新明館

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湯めぐりの合間に
土産品店をめぐる姿も

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