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中心市街地の再生のカギは?(新潟県長岡市「アオーレ長岡」視察)

2012-08-03

 去る7月8日(日)、新潟県長岡市の中心市街地にこの4月オープンした市役所を中心とした複合施設「アオーレ長岡」の建築関係者向け視察会が開催され、参加しました。
 そこで、この長岡市の取り組みについて感じたことをご紹介させていただきます。

○衰退した長岡市中心部の商業
 長岡駅から西に伸びる大通り沿いに中心市街地は立地しているが、丸大百貨店の廃業、大和長岡店の撤退、東口にあったダイエー長岡店の撤退と、百貨店、スーパーの大型商業施設は相次いで退店し、商業集積としては長岡駅ビルにあるCOCORO(JRが運営し、衣料、食料品、飲食店も配置され賑わいを見せている)と西口交通広場を挟んだイトーヨーカドー(売場面積も狭く、賑わいも少ない)のみ。商店街内にも飲食店は目立つが、ファッション店舗はほとんど見られない。
 市役所の方の話では、郊外にアピタなどの大型店が出店するとともに、新潟市まで車で40分、東京まで新幹線で1時間半という立地が、中心市街地商業の衰退に大きく影響したのではないかということ。郊外化と交通の変化だけでなく、消費行動の変化も、中心市街地の商業の衰退の要因ではないだろうか。

○中心市街地再生はまちなか型公共サービスの展開から
 視察会の冒頭に、長岡市の森市長から、今回のアオーレ長岡の開発の考え方について説明をいただいた。そのお話の一端をご紹介します。

(森市長のお話)
 市役所と英語でいうシティホールの違いに着目。市民のホールという意味であれば、市民がいる街の中に市役所も溶け込まなくてはいけないのではないか。その視点で、中心市街地から離れた場所にあった市役所を、中心地に戻そうと計画した。

 アオーレのスペースに市役所の機能を全部入れようと思えば広さ的にはできたが、市民との接点を拡げる視点から、あえて分散させる手法をとった。
 市民生活に密着する窓口機能はアオーレにまとめ、商工部や都市戦略部は再開発ビルに移し、まちなかキャンパスと一緒に、農林部や土木部は丸大百貨店の退店跡を活用し国際交流などの市民センターと一緒に、旧庁舎も活用しながら、なるべく市民の活動と市役所が一緒にあるように配慮した。
 中心市街地の再生を考える時に、いくつかの視点がある。中心市街地活性化やコンパクトシティという言葉は、耳障りはいいが具体的な言葉にできていないし、イメージが共有されていない。
 長岡市の品格をつくるという視点で考えると、28万都市にふさわしい玄関口や拠点整備ということで市民が交流するスペースとしてアオーレを開発し、街の中核ができたことで目的を達成できた。商業以外の活性化を考えると、市役所や交流センターを整備したことでオフィス人口が増加し、飲食店が活性化し、新たな出店者も出てきたことで達成できたと考えている。特に、市役所の職員の車通勤の割合は7割から3割に減り、仕事の後で食事をしたり、お昼を街なかでとる人も増えている。市役所ができることは、都市の機能を再配置し、昼間人口の増加を図ること。
 最後に、商業の活性化については、事業者の問題であり、あくまで市は応援する立場である。主体者が頑張っていただかないといけない。

 長岡市の「長岡市中心市街地都市再生整備計画」(H18~22年)では、中越地震を体験したこともあり大目標として「防災性と利便性の高い中心市街地の創造」を掲げ、長岡広域市民の「ハレ」の場となる新しい長岡の顔づくりを目指し、具体的には「まちなか型公共サービスの幅広い展開による中心市街地の新しい姿の実現」に取り組んでいる。
 また、今回の設計を担当した隈研吾氏は、「20世紀はハコモノの時代で、駐車場を求めて郊外へ向かった。21世紀は交流の時代で、交流のポイントとなる広場が必要になる。そこで、周辺に施設を配置し真ん中に広場をつくるとともに、この広場と全ての施設がオープンにつながることを目指した」とコンセプトを語った。

○市民に開かれた市役所、議会
 年末年始以外は、土日祝日も市役所の市民向け窓口はオープンし、住民登録やパスポートの申請交付、税や年金などの手続きも受け付けている。それに加え、市役所コンシェルジュを配置し、問い合わせに的確な対応を取るとともに、なんでも相談窓口を複数設けて、市民サービスを中心とした市役所運営を感じさせる。
 また、市議会の議場も、1階の「ナカドマ」に面したガラス張りの場所に設置し、また市民交流ホールの上下に議会施設があることで、議会と市民の距離も近くしようとする試みも見られる。

 今回のアオーレ長岡の取り組みは、市民生活と密着したサービスの拠点を中心市街地に移すなど行政として出来ることをまずやって、その中に市民交流の場を設けることで、市民自身が「場の活用」と「いろいろな活動」を行うことで中心市街地の新たな使い方を見つけ出していただこうという実験的な取り組みではないかと感じた。
 「再生」とは、失った機能を元に戻すことではなく、街の新たな使い方を見つけ出すための仕掛けを作ることかもしれない。いろいろな目的の人達が、一つの場所に集まることで、新たな活動やつながりの芽が生まれる。そのための畑の役割を「アオーレ長岡」が果たしていくのではないか。
(峠岡伸行)

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東口のダイエー退店跡を利用し、
越後交通が商業テナントを集めて運営

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アーケードは立派だが、
歩く人はまばらな中心商店街

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市役所と交流センターに囲まれ、
市民が集う屋根付き広場「ナカドマ」

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アオーレから100mほど離れた
再開発ビルにある市役所機能と
まちなかキャンパス

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土日祝日も営業している
市民窓口と市役所コンシェルジュ

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市民交流センターの隣にある
「ナカドマ」に面した市議会議場

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