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ホーチミンにおける新業態小売業

2014-3-25

(1)中心市街地の既存小売業の概況
 ホーチミンの公設市場は、非常に活気に満ちたもので我々が経験したことがない場所であった。狭い通路にぎっしりと商品が積まれ、そのすき間に従業員がいて、精一杯の声掛けをしている。想像するに華やかなりし頃の大阪の天満・黒門市場、船場・本町繊維街のそれであり、今の京都錦市場を縦横にそのまま拡大したような市場になっている。700万人を超えるホーチミン市民の存在を十分に確認しうる市場であり、外国人観光客が昼も夜も多い。電卓を手元に置いて粘り強く価格交渉する姿が非常に印象に残った。私でもおおよそ半額にまで下がる価格には、何を信用すべきか疑問に思ったものである。
 この公設市場と道路沿いの専門店、ショッピングセンターがホーチミン市街地の中心的な小売業である。少し郊外に入ると現地の人向けのショップ(バイク関連、飲食)が多いが、中心市街地には、観光客、富裕層向けのショップが存在している。
 このショップ(専門店)は間口が概ね狭く、20坪未満の店が多く限られた品揃えで常連、観光客を待ち受けている。しかし、店頭には3台のバイク程度しか止まれず、一時期に集中的な集客は望めない体制としか思えない。
 また、市街地型ショッピングセンター(SC)は日本のものとは大きく異なっている。東京の丸ビルなどの商業施設に似ていて、地下に大規模の駐輪、駐車場を備えているものだ。ホーチミンの人気市街地SC(VINCOM CENTER、下層階が商業施設)では、日本国名の企業(現地法人)も出店している。
 この市街地SCは、少ない富裕層の奪い合い競争が激しいので集客できていない施設では空き店舗ばかりの施設も見られた。ホーチミン市民は、まだ所得中間層が充実していないために、施設を維持するために出店企業には、少ない売上を覚悟し、必要経費をかけないという経営努力が必要と推測された。

(2)新業態の小売業
 前述したようにホーチミン市街地では、公設市場、道路沿い専門店、市街地SC、外食などの道端露店を中心に古い商売が地元の人向けに(観光客向けにも)欠かせない状況であるが、当地では小売業の新しい業態が違和感なく同居している。ホーチミンでの移動手段は圧倒的にオートバイであるため、大型店舗ではオートバイの駐輪場を完備している。(市街地SCであっても地下に大型の駐輪施設が準備されており、満車状態となっている。)
 その業態はスーパーマーケット(視察できたのは、地場系)およびコンビニエンスストア(視察できたのはファミリーマート、サークルケイ)であり、また、郊外型大型SC(視察できたのは、ロッテ、イオン)がある。
 これらの商業施設はホーチミン市内に地場系、外資系(日本など)として存在する。これらの業態は、ホーチミン市内に圧倒的に多く居住する若年層をターゲットとした展開をしており、特に外資系ではおしゃれなデザインやブランド商品を品揃えするなど、地元のごく限られた富裕層向けに営業している(現状では繁盛しているとは言い難いけれど)。
 スーパーマーケットは、市内で地場系の施設が展開されており、狭い店舗に衣料、飲食(2階)、食品、日用品・雑貨(1階)が品揃えされている。衣料品はワゴン展開の安価なものが多く、食品は日本でもおなじみのロッテ、日清食品、エースコックなどの食品が並んでいる。化粧品などもあり、日本で言うところの美容部員が一部見られたが、活躍はできていない。化粧品の販売に市民の関心が高まるのにもう少し時間がかかりそうな感じである。
 市街地のコンビニエンスストア(3坪程度のサークルケイ)は、まったく駐車スペースを確保できていないが、加工食品中心で競合もなく品揃えも限られているが、繁盛店であった。このようなオートバイ中心の生活スタイルでは道端の露店のほうが手軽なせいか、未だにこうしたお店にも根強いニーズがある。
 コンビニエンスストアも市街地を中心に徐々に浸透しているものの、実感としては利用経験のある日本人などの外国人が気軽に立ち寄っていたように思う。
 なお、郊外型ショッピングセンター(SC)には韓国系、日本系の企業が存在する。規模に違いが見られるが、視察できたロッテ(韓国)は、日本の昭和50年代頃の大手量販店のように高層4階建て店舗で、4階が食品売り場となっている。上からのシャワー効果を狙っているのか、3階は量販低価格の衣料品など、2階はコーディネート衣料、家電などを含む(当地での)高級消費財売場となっていた。
 開店したばかりのイオンSCは、店舗正面に大きなバイク駐輪場を用意して、大きな日本国内の施設と変わらない雰囲気で、日本から導入した外食テナント、食品売り場にはホーチミンでは見かけない新しい商品、新しい売り方を現地の人たちに提供している。
 お客の入り込みから判断すると、これら生鮮食品、加工食品、および子供向けゲームセンターの分野では現地化が図られそうに思う。しかし、その他衣料品、化粧品、雑貨の分野については事業展開の可能性が低く見受けられる。それは、需要がホーチミン都市部に住む富裕層に限定されることから、現時点では現地の人たち向けに浸透させていくには、まだまだ時間を要するように推測される。
 また、小売業、飲食業などの多店舗化に関しては、現地法人にしないと進めにくい法制度も残っているので、進出を考える企業にはその対応が重要な要因となる。

(津田 均)

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公設市場の雰囲気

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代表的なSCの概観

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地元系のスーパーマーケット

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サークルK

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ファミリーマート

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韓国ロッテのSC

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イオン正面のバイク駐輪

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