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タイの進出企業を訪問(海外視察研修レポートその6)

2015-03-16

バンコクの百貨店とそのターゲット

 今回の視察研修において中心となった製造業のレポートについては他のメンバーに譲り、私は商業にスポットを当てて考察してみたい。 初日の夕食後の時間を使って、県内大学生を引率してバンコクを代表する現地系高級百貨店「サイアム・パラゴン」を視察した。
 バンコクの商業集積の中心サイアム駅の正面に位置し、映画館や水族館も備える。規模的にも日本の百貨店に勝るとも劣らないが、この百貨店の価格は、食品、衣料、雑貨、家電などを大雑把に平均すると、円換算で日本の百貨店より3割近く割高になるのではないか(駆け足の視察となったため非常に大雑把な表現であることはご容赦いただきたい)。
 1人当りのGDPは日本の12%程度という国の百貨店の価格帯が日本の百貨店より高いという逆説的事実。市内の他の百貨店やショッピングモールとの競合もありながらその価格帯で成り立っていることについて、大学生たちにその理由を考察してみるという宿題を出した。以下を出題者としての解答例としたい。
 まず、この百貨店のメインターゲットは誰かという考察だが、短期滞在も含めれば8万人といわれる日本人が浮かぶ。この百貨店では衣食住関連の各種商品が一式日本製でそろえられる。異国での日常生活を送る中では、ここでの消費はレジャーの要素も多分にあり、多少の割高感も許容範囲と推察できる。
 ちなみに、高齢者層をほとんど含まない8万人の日本人市場は日本にも無い。当然、中国・韓国や欧米など他国の駐在員も同様にターゲットと言えるだろう。広い意味では華僑系もここに含まれると考えればそのボリュームはさらに大きくなる。
 次に、タイの富裕層。タイは日本に比べて業種別の賃金格差が非常に大きい。農業に対して電気・ガス・金融・情報などは5倍近い平均賃金を得る。また、職種別でも大きく、同じ工場で働いていても中堅技術者で一般ワーカーの約2倍、マネージャークラスだと4倍以上になる。
 平均すると一人当たりGDPは均されて低くなるが、購買力のある層はその見かけ以上に多い。実際、バンコクには月収5万バーツ(日本円で約20万円)以上という富裕層が約20%いると言われる。この層であれば日本人の収入とそん色無いが、バンコクの人口は600万人とも800万人とも言われるので、その20%ということは日本の100万人都市クラスの購買力に比する。
 さらに、近年の賃金上昇に連れて、バンコクでは中間層の購買力も向上している。この層も、貯蓄意識の低さや、消費のレジャー性、所有がステイタスであることなどの国民性や生活習慣の違い等々から、所得に対する消費の割合は高く、最近の日本で言う「ご褒美需要」「プレミアム需要」的な側面では十分にターゲットとなっているのではないか。
 4つ目のターゲットは観光客。年間の観光客数が1,500万人前後で、世界の都市でもトップクラスと言われるバンコク。食や雑貨などについては一般の観光客も大きなターゲットになっているだろう。
 また、バンコクは位置的にも交通網的にもASEANの中心地。そしてASEANで商業面でも最も成熟した都市の一つである。ASEAN各地に散らばる駐在員が、休日等を利用してバンコクを訪れてショッピングを楽しんでいるようだ。統計上は観光客にカウントされるかもしれないが、性格的には最初にあげた日本人を始めとする駐在員の層に近い。今後、ASEANとしての一体感が高まれば高まるほど、バンコクの商業施設にとってターゲットとしての重みが高まる。
 以上、4区分でターゲットを考えてみたが、こうしてみるとバンコクの百貨店を中心とする高級ショッピングモールの活況の理由も見えてきたように思う。そして、最後の層を捕えていく意味からも、今回視察したサイアム・パラゴンは「ASEANで一番の百貨店」であることを志向するであろう。バンコク伊勢丹を始めとする日系企業も当然それを狙っていく。
 製造業では「タイ・プラスワン」と言われるように頭打ち感があり、その年齢構成から商業・サービス業の面でも最も早く成熟市場になると予想されるタイにとって「ASEANの中心」というポジション確立によるASEAN需要の取り込みは中長期的な大きな課題と言えるだろう。

(川嶋正己)

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サイアム・パラゴン外観

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日本メーカー製が並ぶ菓子売場

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伊勢丹バンコクの外観

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