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山陰の小京都(萩・津和野)を訪ねる観光とまちづくり視察会を開催(萩編)

2017-10-17

 福井県中小企業診断士協会では、地方創生に参画する中小企業診断士の育成や協会活動を目指し、観光産業化研究会を発足させるなど、地域づくりや観光活性化に取り組む地域の現地調査を兼ねた視察会を開催しています。
 今回は、福井県内の各地域に向けた提案を進めていくためのベンチマーク調査を兼ね、山陰の小京都と呼ばれる山口県萩市と島根県津和野町を訪問しました。

観光入込客の動向
 今回訪問した萩市は人口47千人余り、津和野町は7千人余りとそれぞれ地方の小都市で、「山陰の小京都」として多くの観光客を集めています。
 特に萩市は、平成27年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の舞台になったこと、萩反射炉や松下村塾等を含む萩城下町が「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産登録されたことで、観光入込客が大きく伸びています。
 しかし、昨年は以前の数値に近づいてきていて、大河ドラマ等の効果は1年間ということが実感できる数字となっています。
 ただ、注目すべきは、新幹線の新山口駅からJRの便が悪く、直行の連絡バスを使っても1時間以上かかる場所にありながら、毎年県外からの多くの観光客を集めており、さらにその内、関東エリアからが23%(H28年)を占めるなど、常に新たな魅力を生み出し続け、広域からの集客が続いている地域になっているところです。

観光の玄関「明倫学舎」を整備オープン
 萩市では、平成29年3月、市中心部にあった明倫小学校の木造校舎を耐震補強して萩観光の玄関口として「萩・明倫学舎」を整備オープンしています。
 この「萩・明倫学舎」は、長州藩の藩校として設置された明倫館の跡地にあり、「観光インフォメーションセンター」に「世界遺産ビジターセンター」と「幕末ミュージアム」、「ジオパークビジターセンター」まで集め、レストランやお土産ショップも併設。さらに明倫小学校の歴史紹介展示や教室の復元、研修施設もあり、大型バスの駐車場を含めて萩観光の新たな拠点となっています。
 また、敷地内には坂本龍馬も試合をしたと言われる槍・剣道場「有備館」も現存し、歴史を伝えています。

萩は「まちじゅう博物館」
 萩には、たくさんの文化財をはじめ歴史や文化、自然が豊富にあり、これを活かす取り組みとして、平成15年に「萩まちじゅう博物館構想」を策定し、市民協働で①研究・保存、②展示・情報発信・活用、③拠点整備と周辺整備、④「心のふるさと・萩」のおもてなし、という4つの重点事業を実施しています。
 市民によるNPOを立ち上げ、博物館の管理運営、ガイドや清掃などに取り組むほか、「ワンコイントラスト(100円信託)」により歴史的環境及び自然環境の保存、修復、活用などにも取り組み、平成29年3月現在で信託金の累計は3,000万円を超えています。
 萩ものしり博士検定や萩・幕末維新検定などを通して市民の歴史や文化に対する意識向上を図るとともに、語り部の育成や筋名復活などでも、街なかで歴史を感じる空間づくりにも取り組んでいます。

来年は「明治維新150年祭」
 来年、明治維新から150年を迎えることで、萩市では街じゅうに「明治維新150年祭」を記念する紅白の幟が立てられ、彩りを添えています。
 この9月からはJRのディスティネーションキャンペーンも始まり、10月には萩市内でも各種イベントが開催されるなど、計画的に観光イベントやキャンペーンが行われている印象を持った。

萩の名物を揃えた「はぎ御膳」
 萩では、地元の旅館やレストラン、お弁当店が連携し、地元の食材を使った「はぎ御膳」と「はぎ弁当」を提供しています。
 今回の訪問では「高大」さんで「はぎ御膳」を体験しましたが、松花堂弁当の入れ物に萩焼の小鉢が9個配置され、この日のメニューは①萩さざえ旨煮、②甘鯛天ぷらマスタードソース、③季節の果物夏みかんのジュレ、④見蘭牛ビアンシケンサラダ、⑤萩の魚三種盛り、⑥ふぐ南蛮漬け、⑦むつみ豚クリームシチュー、⑧蒸し長州鶏、⑨イカ麹和え、といった萩ならではの食材を使いった和洋の料理を楽しむことができました。

実は使える「萩まるごとクーポン」
 萩は江戸時代の町割りがほぼ残されていて、「古地図を見ながら歩ける街」でもあり、それを活かして萩市観光協会では、古地図にいろいろな観光施設や飲食店、土産品店などでの優待サービスや記念品を受け取れるクーポンを加えた「萩まるごとクーポン」を販売しています。
 市内の75の施設・店舗や乗り物に利用できる5枚のチケットが付いていて2,000円。1枚当たりは400円相当になりますが、交換で受け取れる記念品等は約500円相当となっていて、お得になっています。
 ちょっと残念だった点は、このお得感がチケットでは伝わりにくいことと発売所がJR駅と市役所にある観光案内所に限られていることで、ここは改善の余地ありというところです。

観光資源の見直しとターゲットを絞り込む
 萩市のホームページに平成22年に策定した「萩市観光戦略5か年計画」が紹介されています。そのはじめには、『「萩にあるもの、萩にしかないもの」を活かした観光戦略とは何かを絶えず問ながら、時代にも誇れる郷土「萩」を目指すことができるよう差別化戦略を構築していかなければなりません』と述べていて、観光資源毎にターゲット層やターゲット地域を明確に規定し、さらに萩市の観光資源のポジショニング図まで掲載しています。
 現在、この計画が更新されていないことは残念ですが、ポジショニング図やターゲット層の絞り込みなどは、県内各市の観光ビジョン策定において大いに参考となるものではないでしょうか。
 福井県内の自治体の観光ビジョンの中には、インバウンド対策等を含めた全体的な観光トレンドを示しながらも、実際に予算化された整備や計画されている施策を前提にしたものも見受けられますが、もう一度市内や周辺の歴史、文化、自然などの観光資源を再確認する作業も必要ではないでしょうか。

クルーズトレイン「瑞風」と遭遇
 今年6月から運行スタートしたJR西日本のクルーズトレイン「瑞風」が、2日目の朝に東萩駅に到着するとの情報を知り、津和野への移動を少し遅らせ、「歓迎セレモニー」に参加してきました。
 「トワイライトエクスプレス瑞風」は、現在5つのコースで運行されていて、山陰コースの下りで萩への立ち寄りが行われ、朝8時40分頃に東萩駅に到着し、専用のバスに乗り換え約3時間の萩城下町観光を行い、11時30分に萩駅から大阪へ向けて出発する日程になっています。
 東萩駅では、奇兵隊の衣装に身を包んだ関係者が横断幕を掲げて歓迎のセレモニーを行い、市民の方や我々のような観光客も無料でホームに入り、参加することができます。
 このような市民あげての歓迎も、乗客の皆さんには特別なムードを盛り上げているのかも知れません。

世界遺産認定よりも文化度が大切では
 平成27年に「明治日本の産業革命遺産」に認定され、その当時は多くの県外観光客を集めていたと考えられるが、約2年たった今回の訪問時は萩反射炉などの人出はまばらで、ブームは終わった感がありました。
 一方で、萩の城下町を始め白壁に囲まれた通りで見られる庭木の数々はよく手入れされていて、地域の文化度の高さを強く感じます。
 歴史を伝えたり、古くからの建物を残したり、再生したり、という地域の活動を見ると、市民レベルでの文化度の高さを感じます。
 これからの観光を考える上で、その街で過ごす時間がどれだけ充実したものにできるかは、施設面だけでなく市民のおもてなしや文化度の向上がカギになるのではないかと感じた瞬間でした。


(峠岡伸行)

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表1 萩市の年間観光入込客数の
推移(千人)

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歴史を感じる木造校舎を使った
明倫学舎

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世界遺産の城下町にある菊谷家住宅で

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街じゅうに紅白の150年祭の幟が立つ

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萩の名産品を揃え2,400円で提供

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クーポン協賛店は、75店舗・施設で、
サービス内容も多彩

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東萩駅に到着する
ダークグリーンの「瑞風」

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専用バスに乗り換え時に
記念写真を撮影

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手入れされた庭木は地域の文化度の証

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