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萩・津和野視察旅行を終えて

2017-10-17

 【はじめに】
 平成29年9月30日から10月1日にかけて、山口県萩市、島根県津和野町を視察しました。どちらも「小京都」として有名で、山陰地方の主要な観光地です。萩市は「松下村塾」や「萩反射炉」、津和野町は「津和野城址」や「SL山口号」が有名です。全国的にも成功している観光地といえます。
 どちらも我々の住む福井県の大野市や小浜市と同規模の人口を擁していますが、「観光業」の成功度合は相応の開きがあると推察されます。指標によりバラつきはありますが、萩市の第3次産業従事者数、津和野町の人口1人当たりの観光入込客延人数からは、双方とも観光業が安定した付加価値を生み出す事が出来ており、結果的に雇用に繋がっていることが読み取れます。以降におきまして、萩市、津和野町を視察しての考察を述べさせていただきます。

訪問地と県内比較 萩市 津和野町 大野市 小浜市
人口(H29.8) 47,735人 7,402人 32,261人 29,159人
第3次産業従業者数
(17年国勢調査)
19,018人 2,808人 11,185人 10,318人
観光入込客延人数 2,417,406人 1,203,519人 2,072,000人 1,616,000人
人口1人当たり
観光入込客延人数
50.6人 162.6人 64.2人 55.4人

【萩市を視察しての所感】
 視察旅行初日は萩市を訪れました。萩反射炉、道の駅「しーまーと」、松下村塾、明倫学舎を訪れました。萩反射炉、松下村塾、明倫学舎は観光客向け、道の駅「しーまーと」は地元客向けと、ターゲット層が明確であると感じました。
 萩反射炉は世界遺産、松下村塾は吉田松陰という日本の偉人、明倫学舎は明治維新・産業革命をその中心であった萩市で学べるという明確な強みがあり、観光客に訴求できています。
 道の駅「しーまーと」は、駐車場には県外ナンバーの車は散見されたものの、地元ナンバーの車が大半でした。地元産表示がある農産品・畜産品・加工品が販売棚の大半を占めていると感じました。食器として「萩焼」も販売していることも踏まえると、地元住民の食生活に密着しており「地産地消」が強く意識された施設といえます。「萩焼」については、地域住民に認められて生活に密着(既存市場浸透)していることが第一歩としてあったことが、全国的に有名(新市場開拓)となったのではないでしょうか。
 ご当地メニューとしては、はぎ御膳があります。はぎ御膳の条件として、下記4点が提示されています。

  • 各店舗がはぎ御膳の中で、萩らしさを表現する料理を提供
  • 桐箱・弁当箱の、マス内にこだわらず枠中におさめる
  • 萩だからこその季節感等を説明できる食材を使用
  • お客様へのおもてなしとしてお品書きを用意

「枠中におさめる」「お品書きを用意」といったように、高級感やそこでしか味わえない感を演出する為の最低限の仕組みは条件提示しています。一方で、「萩らしさ」「萩だからこそ」といったコンセプトのみを条件提示し、メニューの細かい点までは指定しないことで各店舗の創意・工夫を促し、付加価値を高める仕組みが構築されていると感じました。

【津和野町を視察しての所感】
 視察旅行2日目は津和野町を訪れました。休日ながら観光客でごった返しておらず、街並みと観光客数のバランスがとれていることも「小京都」としての趣を高めていると考えられます。屋根瓦の色も統一感があり、津和野城跡(標高370mの山頂)から望む城下町からは、津和野町の観光地としての仕組み作りの意図を感じました。その津和野町を走るSLやまぐち号も、観光地としての魅力・付加価値を高めています。
 津和野城跡にいく為には、霊亀山(比高210m、徒歩40分)を登らなければなりませんが、そこに行く為にリフトが用意されています。観光客に配慮された仕組みといえます。大野市の越前大野城(比高90m、徒歩20分)にも応用できるのではないかと感じました。

【双方に共通して感じたこと】
 萩市、津和野町双方に共通して感じられたことは、戦略的な街づくり(ハード面)がなされていることです。上記に挙げたこと以外(歴史的遺産、屋根瓦の統一)にも、電線地中化の進捗率が高いと感じられました。電線地中化の目的は、景観維持や、災害時の交通障害防止といったことが一般的認識です。また、電線にはカラスといった鳥獣が留まり糞などの汚物が下の道路に付着するなど環境美化の面で障害になります。電線地中化は、そもそも町中を汚さないための仕組み作りの面でも有効であると考えられます。大野市、小浜市も主要な通りは電線の地中化は進んでいますが、「小京都」として売り出すべき場所においては進捗が不十分と考えられます。ただし電線の地中化には、既存道路幅や自治体予算といった制約はあるため、観光客の動線や最適な散策ルートを考慮して進めていくことが必要です。
 地域に暮らす住民に対する教育(ソフト面)においても熱心と感じます。萩市は、「萩・幕末維新検定」、「萩ものしり博士」といったご当地検定で歴史の周知を図っています。津和野町では、地域住民による観光ガイドが行われており、観光ガイドとして必要な知識を習得しています。どちらも、限りある資源を有効活用しているといえます。

【最後に】
 総括すると、「観光業」で地域を発展させていく為には、自治体・事業者ともに戦略(ハード面、ソフト面)を描き、それに合わせた取組が重要と感じた2日間でした。その為にも、自治体は現状・制約条件を認識したうえで「地域の将来像、課題設定、解決策」を描き、それらを地域住民に理解・浸透させることが必要です。併せて文化的な成熟も必要です。それには長い時間を要しますので、仕組み作りが重要になってきます。その第一歩が自治体・事業者ともに「内部・外部の環境認識、強みの認識」と考えます。その為にも中小企業診断士の関与できる余地は大きいのではないのでしょうか。

(前田 泰利)

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松下村塾

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萩反射炉

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道の駅「しーまーと」

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売場(地元産の食材が多数並ぶ)

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はぎ御膳

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お品書き

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津和野城跡から望む城下町

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SLやまぐち号

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津和野城観光リフト

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山頂にある津和野城跡

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萩の城下町

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津和野の街並み

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萩の検定試験

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津和野の住民による観光ガイド

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