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中小企業のインドネシア進出の可能性と雇用環境

2019-03-07

インドネシアの概要
 人口2億6千万人(世界第4位)の巨大マーケットを有するインドネシアは、実質GDPも毎年5%前後で推移し、経済成長も高成長時代からは鈍化しているものの着実な成長と遂げている。若手の労働力も豊富で、人口ピラミッドにおいても綺麗なピラミッド型の人口形成となっている。所得面では、中間所得層(可処分所得US$5000〜35,000)が、2009年時点で全人口比の34.5%であったが、2020年には73.1%になることが予想されており、旺盛な個人消費も見込まれる。
 視察先であるイオンモールにおいても、中間所得層をターゲットに「エンターテイメントと食」をテーマとした店舗戦略を展開していた。
 インドネシアでは、2大格差(地域間格差と所得格差)が問題となっていると聞いたが、政策により港湾、空港、道路・鉄道などインフラ開発が進められ、併せてビル建設もかなり多く着工されているなかで、開発が進む周辺では、老朽化した低層住宅が広がっており、経済発展のスピードと所得上昇のスピードのアンマッチがあるように思え、格差が広がっているのも伺えた。

ジャカルタの交通事情
 「渋滞がなければジャカルタではない」と言われるほど渋滞が蔓延している。この渋滞を緩和するため、大量高速鉄道(MRT・2019年5月完成)や次世代型交通システム(LRT)の建設や高速道路の整備が進んでいる。
 しかし、ジャカルタでは車、バイクが溢れどこに行くにも渋滞を体験しなければ目的地に達することはできない。私も食事会場からホテルへバスで戻ったが、1時間程度を要し昼夜問わず渋滞している状況を体験した。後で聞いた話だか、徒歩の場合15分程度で戻れる距離だったそうだ。
 そうした交通事情の中、オンライン配車サービスを提供する「GOJEC(ゴジェック)」の存在に興味を持った。「GOJEC」は交通渋滞を避けるための移動手段として利用するバイクタクシーサービス。携帯電話の普及により、専用のスマートフォンアプリで目的地を指定するだけで手配でき、手軽に利用できる。運賃は、10㎞までが7500ルピア(60円程度)。通勤、買い物の移動手段としてたくさんの人が利用している。「GOJEC」の運転手登録は30万人、平均月収は約400万ルピア(3万2千円程度)。その他、食事のデリバリーや宅配、買い物代行、清掃、マッサージ師派遣等の18種類のアプリを掲載しサービスを展開している。
 同様のサービスを展開している「Uber」も進出しているが、渋滞を避ける手段としてバイクタクシーの方が多く利用されているとのこと。ただし、車間ぎりぎりで走り抜けていくため接触・人身事故のリスクは高く、現地ガイドや駐在員によると、「事故も多く利用するなら相当な覚悟をもって乗車した方がいいよ」とのアドバイスだった。
 今後、交通インフラの整備が進み交通渋滞が緩和されれば、サービス内容も変わっていくことも想定されることから今後の「GOJEC」のビジネスモデルを注視していきたいと感じた。

中小企業のインドネシア進出
 巨大市場や安価な労働力を求めて海外進出を検討している企業は少なくない。進出に当たってはどの国においても外資規制があり、事前に十分検討をする必要がある。
 インドネシア政府は、産業保護のためにネガティブリスト(投資規制分野)を設けており、外国の技術を取り入れる為に外資優遇している分野と自国産業を保護する分野を区別している。これらの規制は、①投資法、②新大統領規則、③原則許可に関する規則、④事業に関する規則の4つの規制から成る「投資法等」で定められている。インドネシアでビジネスを展開するに当たっては、外資系企業が行う事ができない、もしくは一部規制されている事業分野があることを理解して、ネガティブリスト(投資規制分野)でチェックする必要がある。
 今回の研修で、中小企業のサービス業(飲食業を除く)の動向や進出の可能性の検証を課題として参加したが、外資規制の説明を受けた時点で、パートナーシップ契約での進出の可能性はあるものの、なかなか困難であると感じた。

インドネシアの雇用状況
 インドネシアでは、労働者に関する法律として労働法があるが、基本的には労働者に有利な内容となっている。インドネシア現地スタッフを雇用するにあたっては、今回、視察した日華化学(PT.INDONESIA NIKKA CHEMICALS)やセーレン(PT.SEIREN INDONESIA)の社長や駐在員の話では、日系企業の賃金は現地法人より高く定着率は高いが、管理職においては、キャリアアップ志向が高く3〜5年で転職していく人も多いとのこと。
 雇用する上での留意点は、宗教への口出しはタブーで、イスラム教徒の多いインドネシアでは、礼拝の時間や場所に配慮したり、服装を合わせたり催事へ積極的に参加するなどコミュニケーションを図り労使関係を築いているとのことだった。
 現地労働者を雇用する場合は、契約により採用するが、まじめだがのんびりしている国民性から詳細な契約書が必要である。視察企業では、一例として、警告を含めて4回遅刻した場合は解雇処分となる契約になっている。
 一方で、日本で雇用する場合もある。近年、労働者不足を反映して、外国人労働者の規制が緩和されつつあり、福井県にも学生や技能実習生を含め約262人(H29/12現在)のインドネシア人が在留しているが、技能実習では漁業関係が多いと聞いた。インドネシアをはじめとする外国人労働者を雇用する場合は、協同組合を通じた雇用が想定されるが、宗教への配慮や国民性を反映した労働条件や環境等は詳細に検討する必要がある。
 今回の研修を通じて、海外進出および外国人雇用等を検討する場合は、その国の規制状況や国民性、進出企業の実体験の情報をいち早く収集しアドバイスするよう心掛けたいと感じた。

(竹内昌彦)

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