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調査研究レポート

中小企業の資金戦略のあり方 ―実態に即した分析― 第1章

中小企業診断士 神尾修二

第1章 はじめに

この研究では、企業の中にあっても売上高が10億円程度までの、比較的経営内容の良い(黒字経営の)中小企業を対象とする。
なお、その全ては同族経営であり、法人企業ばかりでなく個人企業も含まれる。
これらの中小企業は、いわゆるバブル期には余剰資金を有価証券や不動産に投資し、今になってその処分に困惑していることが多い。しかも、取引金融機関からの積極的な融資攻勢にあい、必要以上の資金を保有することになり、これを定期預金や定期積金などの固定性預金に運用し、結果的に資金繰りの悪化を招いている例が多い。
経営内容が良く、取引金融機関からの積極的な融資があるため、資金的には潤沢である筈のこれらの中小企業が、何故資金繰りの労苦を強いられるのであろうか。その要因として、次の4点が考えられる。
(1)自企業の支払能力を正確に掴んでいない。
(2)自企業の借入能力を正確に掴んでいない。
(3)過大な現金預金への資金運用。
(4)固定性預金や借入金に依存した資金繰り管理。
この研究では、これら4点について次に述べるような手法を用い、実態に即したものとして、それぞれの管理のあり方を解明する。
(1)の支払能力については、損益分岐点をベースとした収支分岐点分析により、実態に即した支払能力の把握のあり方を解明する。
その際において、中小企業が日々の資金繰り維持にあって、経営者の家計を巻き込んだ上で行っている実態を考慮したものとして行う。
(2)の借入能力については、倒産分岐点分析により企業の借入限度額を把握することで、企業の実態に即した借入能力の分析のあり方を解明する。この分析手法は、借入金を基準とした損益分岐点ともいえるもので、求められた借入限度額を超えた借入は損失を招き、いずれは倒産に追い込まれるというものである。したがって、この分析を行うことにより、企業がどの程度の借入能力を有するかが明確になる。
(3)の現金預金への資金運用については、決算書の実例の分析を通して、実態に即した現金預金への資金運用のあり方を解明する。
前述のように、経営内容の良い中小企業は、取引金融機関からの融資攻勢にあっているケースが多い。ところが、それにも拘わらず資金繰りに苦しむのは、得られた資金を定期預金や定期積金などに固定化したり、そうではないまでも、現金や当座預金・普通預金などとして、必要以上に手持ち資金として抱え込むことが原因となっている。結果、実質的な借入金利は表面金利を大きく上回り、慢性的に必要以上の金利負担を背負い込むことになっている。決算書の実例を分析することで、これらの事実が明らかになる。
(4)の資金繰り管理については、実態に即した資金繰り管理のあり方を解明する。資金繰り表はこれまで多くの文献に取り上げられているが、それらは資金繰りの考え方や結果の分析に主眼が置かれているため、資金戦略が重視される中小企業の現場にはそぐわないことが多い。そこで、二三の資金繰り表の例を取り上げ、より資金戦略に則ったものとするにはどうしたらよいのかを考察することとする。
以上のように、この研究では先達の研究の成果に中小企業の現場における実情を加味することで、研究の結果が実態に即したものとして、実務上より有効となることに主眼をおき進めていくものである。

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