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調査研究レポート

中小企業の資金戦略のあり方 ―実態に即した分析― 第6章

中小企業診断士 神尾修二

第6章 おわりに

いわゆるバブル経済崩壊後の長引く不況の下、北海道拓殖銀行や山一證券を始めとして最近ではそごうに至るまで、大企業がいくつも破綻してきている。破綻に至らないまでも、熊谷組などのように取引金融機関に債権放棄を要請し、経営再建を目論む上場企業も後を絶たない。金融機関は再建させた方が損害が少なくて済むこと、倒産は社会的影響が大きいことの2つを理由に、債権放棄してでも大企業の事業活動を継続させるのである。
ところが中小企業に対しては、担保評価が下がったからと追加担保を要求し、それに応じなければ既存の融資を引きあげ、健全な事業活動を阻害するなどは、当然のように行われている。ましてや中小企業は債権放棄などという破廉恥な救済策など望むべくもなく、経営者が保険金目当てに自らの命を絶ち後始末するのが精一杯といったことが、現実の姿なのである。
このような現場での、大企業一辺倒の金融環境の中にあって、中小企業は自らの努力により自己防衛の力をつける必要がある。それがこの研究で明らかにしてきた、自己の支払能力と借入能力を知ることであり、さらには調達された資金の流動化と自助努力を優先した資金繰り管理の実践なのである。
今、金融機関は自らが生き残るのに精一杯で、中小企業の育成支援などは二の次三の次である。
したがって、まだ担保枠があるから追加融資するなどといった甘いセールス・トークに乗ったとしたら、正に金融機関の術中に嵌ってしまう。追加融資で得られた資金は、次の定型営業戦略である定期預金や定期積金として奪っていくのである。そして金融機関の業績に貢献することになるのである。もうこんなことをやっている時代は終わった。
自らの支払能力と借入能力を知り、調達資金の流動化と自助努力優先の資金繰り管理を実践するということは、すなわち、身軽な財務体質を構築し、高効率の経営を実践するということに他ならないのである。
これが不況期における経営の本質であり、大企業に比べ小回りの効くといった中小企業の本領発揮のための処方箋といえるのである。
大企業は経営難ともなれば、まず合理化の名の下、大量の人員整理を行う。そして、下請けや納入業者への強引な値引き要請や不採算部門からの撤退である。さらには、金融機関への債権放棄要請となる。
元々余裕無く、ぎりぎりの態勢で事業活動を維持している中小企業にとっては、これら大企業のような再建策は望むべくもないところである。今一度自らの足元を見回し、絞れるところは絞り、今ある材料を最大限活かす努力をすべきである。

以上。


1)藤原欣一郎、『経営分析論の理論と実務(増補版)』、森山書店、1999年3月、241頁
2)マンパワー経営学院、『昭和60年度中小企業診断士・2次試験対策特別講座、テーマ別ケース・スタディ(2)(商業)』、  日本マンパワー、1985年9月
3)事業所税は考慮しない。
4)個人事業税は、事業上の費用として固定費に含まれることになるので、重複しないよう注意すべきである。
  所得税と住民税は、費用とはならず生活費として扱われるので、既にこれらを生活費に取り込んでいるのであれば、やはり重複しないよう調整すべきである。
5)国民健康保険税は考慮しない。
6)長島俊男、『経営比率に見る安全・注意・危険信号』、同友館、1995年11月、181~196頁
7)同上書、197~198頁

参考文献
・長島俊男、『経営比率に見る安全・注意・危険信号』、同友館、1995年11月
・ 同  、『中小企業のための経営数字の見方』、日本経済新聞社、1992年6月
・青木茂男他編、『資金管理の診断』、同友館、昭和53年3月
・久島巖編、『平成12年3月申告用・所得税確定申告の手引』、清文社、平成12年1月
・青木茂男、『資金業務の管理』、中央経済社、昭和38年12月
・上原学、『経営分析入門』、第一法規出版、昭和54年5月
・ 同 、『基本経営分析』、同友館、昭和56年10月
・秋本敏男他、『現代企業の経営分析』、中央経済社、平成8年6月
・田中恒夫、『企業分析・評価論』、創成社、1994年10月
・藤原欣一郎、『経営分析論の理論と実務(増補版)』、森山書店、1999年3月
・伊達陽、『資金繰りと財務安定性の分析』、税務経理協会、昭和58年6月
・浦野平三、『運転資本論』、ミネルヴァ書房、1980年3月
・マンパワー経営学院、『昭和60年度中小企業診断士・2次試験対策特別講座、テーマ別ケース・スタディ(2)(商業)』、日本マンパワー、1985年9月
・桐生孝雄他監修、『平成12年度版・税法便覧』、税務研究会出版局、平成12年7月
・田中進他、『実践小売業の経営診断』、同友館、1998年5月
・國弘員人、『資金繰分析入門』、銀行研修社、平成10年11月
・ 同  、『損益・資金分析』、中央経済社、昭和55年2月
・ 同 、『新講経営分析』、中央経済社、平成元年2月
・伊藤嘉博、『損益分岐点のすべてがわかる本』、総合法令、1993年10月
・木下安司、『改訂版「小売店の計数管理」がいちばんやさしくわかる本』、経林書房、1996年7月
・鶴田彦夫、『よくわかる資金繰りの実務』、PHP研究所、1991年5月
・杉澤新一、『財務管理』、日本マンパワー、昭和59年
・平野健、『経営分析すらすらシート』、中経出版、1992年12月
・村井敞、『実践キャッシュフロー経営』、日刊工業新聞社、1999年5月
・荒川邦寿、『企業診断分析』、中央経済社、昭和57年3月
・青木脩、『原価分析』、税務経理協会、昭和53年7月
・國村道雄、『現代経営分析』、白桃書房、昭和54年6月
・岡本治雄、『財務分析の展開』、中央経済社、平成10年6月
・秋本敏男他、『会計情報分析の形成と展開』、同友館、1998年4月
・上原学、『経営分析の理論と実務』、中央経済社、昭和55年10月
・本間建也、『財務を強くする経営指標・原価指標まるごと活用術』、中央経済社、平成6年12月
・高松和男、『経営分析と経営情報』、同文館、平成9年3月
・谷江武士、『基本経営分析』、中央経済社、平成5年12月
・田中弘、『経営分析の基本的技法・第4版』、中央経済社、平成7年3月
・日本公認会計士協会東京会編、『企業総合力診断』、ダイヤモンド社、1991年5月
・野村秀和編、『企業分析』、青木書店、1991年4月
・三上富三郎、『現代経営診断論』、同友館、昭和61年1月
・森脇彬、『資金と支払能力の分析・改訂版』、税務経理協会、平成2年9月
・染谷恭次郎、『経営分析・三訂版』、国元書房、平成5年11月
・川村助雄、『企業診断に役立つ経営分析』、税務経理協会、昭和55年2月
・『新しく事業を始められる方へ・新規開業の手引』、国民生活金融公庫、平成12年3月

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