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九州視察研修に参加して

2012-04-20

 平成23年度の福井県支部九州視察研修に参加し、①新博多駅ビル(JR博多シティ)、②熊本城・くまもとさるく、③黒川温泉、④湯布院、⑤豊後高田「昭和の町」、の計5ケ所の研修視察を行った。その中で、観光による地域活性化・再生に取組んでいる下表の4観光地の印象とその比較を全くの個人的の主観によって述べてみたい。

【くまもとさるく】
 熊本市内の観光・歴史・名物店をボランティアが案内してくれる「くまもとさるく」(さるくは歩くの意味)。案内人に一言聞くと、興味深い熊本の歴史・伝統を次から次へと話してくれる。また、地元の店の背景・物語を語り、本当に推薦・応援しているんだなと感じた。横井小楠など福井県とのつながりにも詳しかった。

【黒川温泉】
 自然の中の小さな温泉地で心がいやされる。案内板も統一されており(個々の旅館の看板はない)また、商店も含め建物のイメージが和風に統一されている。種類の異なる露天風呂めぐりが楽しく、「黒川温泉一旅館」を実感できた。ただ、人気がありすぎて人気のある露天風呂には入れないし、入れても混んでいてゆっくり入れなかったのが残念。(サービスレベルの維持のため入湯者の制限をおこなっているようだが。)

【湯布院(由布院温泉)】
 歓楽街や大規模ホテル・旅館はなく田園的な名残を残している。観光客の数はさすがに多かった。有名観光地になって地元の人の生活感が分断されたせいか、素朴な温泉地と商業主義中心の観光地化という二面性が出てしまい、地域としての一体感があまり感じられなかった。中国や台湾の富裕層でも相手にしているのかと思ってしまうほど土産物の価格も高くとても購入する気にならなかった。また、販売しているものも他の観光地にでも販売しているようなガラス製品や土産物が多い気がした。

【豊後高田市の昭和の町】
 昭和のよさ、懐かしさを感じた。昭和のお宝満載の「昭和ロマン蔵」、特に玩具の量と質には圧倒された。「ご案内人制度」の案内は地元の商工会議所の女性職員。一生懸命さは伝わる説明であったが、休日なのに仕事とはちょっとかわいそうな気がした。個々の店は商品を売りたい意識が見えすぎてちょっと引いてしまった。また、駐車場が平成23年4月から有料(500円)となったのは残念。

 この4観光地は現在ではいずれも全国的に有名であるが、もとから有名であったわけではない。なぜ有名になり観光客を呼び込んでいるのかを考えると共通点が見えてくる。
① 黒川温泉のモットーである「黒川温泉一旅館」で代表されるように、地域が一体となり観光客と向きあっている。地域全体の魅力を高めることによって個々の事業者のメリット増加につなげている。
② そこにあるもの(素朴な自然、地域で永年にわたり営業してきた歴史、日常の生活)に付加価値を付けて魅力度を高めている。
③ 観光地振興・活性化の中心となる人物のリーダーシップ・献身が周りの関係者を巻き込んで大きな流れを作り出している。
④ 楽しい時間や面白い体験(「モノからコトへ」)を観光・集客の柱としている。

 しかし、今後も人気観光地を維持していくためには以下のような課題もあると感じた。
① 有名になると一般観光地化し、他の観光地と変わり映えしなくなり差別化ができなくなる。
② 観光客の増加に伴い、観光客の求めるものとずれが生じ満足度が低下する。「身の丈(規模)にあった集客」を忘れがちになる。
③ 「記念写真は1枚あればよい」の観光客をリピータ観光客にどう変えていくか。
④ 現地での消費をいかに増やすか。(もうけ主義でなくおもてなしの気持ちを忘れずに)
⑤ ヒト(先達者、リーダー、ボランティア)をいかに生み出すか。

 ちょっと観光しただけなのに(視察研修ではなかったの?本音がでた~)偉そうなこと書いてしまった。でも、貴重でありまた楽しい3日間を体験できて本当に良かったと思っている。福井県支部の会員の皆さんも次回は是非参加されることをお薦めする。
(長谷川俊文)

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