福井中小企業診断士協会

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次世代産業について

2013-01-18

 国や自治体への補助金申請に伴う、企業の新事業開発案件の審査を行うことが多くなった。建前として、新奇性、実現可能性、収益性などの評価項目に沿って審査を行う。私の評価はまず、内容がわかること(そうでなければ評価のしようがない)と、その技術が製品になったとき、ユーザーにどの程度プラスになるかである。
 しかし正直言って、いくら時間をかけて審査しても、何が本当に有望な事業なのかわからないことが多い。国が推奨する技術分野が示されていても、多分野が網羅されており、たいていどれでも当てはまる。当てはまらなくても、国の推奨するものはたいていダメになる。だから、推奨されているかどうかは意味がない。とくに、未知の分野で細部の技術開発に関するものは、皆目見当がつかない。私以外の審査員も、同じだと思う(もっとひどいかも)。本当は有望な開発案件であるにかかわらず、説明の仕方が悪いために、評価されないこともある。審査員のレベルが低いこともある(レベルの高い審査員がいるかは疑問である)。さらに、ほんとうに有望な案件の場合、開発者はその事業にかかりきりで、補助金申請になどとても手が回らないはずだ。補助金を受けたため、かえって足を引っ張ることになることもある(これは経験がある)。
 これらのことは例えば、私たちが暗い夜道で大事な落し物をしたときに、電灯の下の明るいところだけを一生懸命探しているのと同じである。ではどうすればいいのか。

 これに関して、原田泰氏の著書「日本はなぜ貧しい人が多いのか」の章、「日本にはストライカーがいないのか」を読んで、まさしく目からうろこが落ちる気がした。原田氏は、次世代のエースとなる産業を、サッカーのエースストライカーになぞらえて、次のように述べている。
 ≪ストライカー産業をどう育てたらいいかについては、実はわからない。わからないことに予算を使うべきではない。むしろ、ストライカー産業のコストである投入産業(運輸、通信、電力、金融、工業団地、用水などを提供する産業)の効率を高め、そのコストを引き下げてはどうだろうか。【中略】投入コストは産業のコストだけではない。中央と地方の政府が無駄なお金を使わなければ税コストが低下する。【中略】投入コストを下げるとは、ストライカー産業がシュートしやすい絶妙なパスを出すということだ。【中略】国内の投入コストを下げることが、ストライカー産業を育てるための最良の方法ではないか。≫
 すなわち、わからないものには、無駄な補助金を出すなということだ。まことにすっきりしている。そう考えると、今の政策は全く反対のことをやっている。コストを低減しなければならないインフラに大盤振舞いをして、どんどん価格を釣り上げている。太陽光発電電力をはじめとする自然エネルギー電力の高額買い取りなど、まさしく愚の骨頂である。

(佐治 眞悟)

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