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山形市の中心市街地を訪問して

2013-07-04

 先日、初めて山形県を旅行する機会があり、山形市を訪れた。
 山形市は、山形盆地の東南部にあり、人口約25万人と福井市とほぼ同じ規模の都市で、平安時代末期からの歴史を有する城下町です。
 東側を仙台市に接し、仙台中心部とのアクセスは、高速バスが15分間隔(片道900円)、JR線(快速か普通)が1時間に1本という近さです。
 山形市の中心市街地活性化計画によると、現在の中心部の街並みは、約400年前に基礎が形成され、昭和30年代に地元百貨店等の立地により、山形駅前と七日町地区の2大商業地区が生まれ、これをつなぐ「ロの字型」の商業集積が進んできました。
 しかし、人口の郊外化、車社会の進展により、大型商業施設の郊外出店加速なども相まって、居住・商業両面での中心市街地の空洞化が進んだということで、これは地方の県庁所在地のどこでもみられる現象です。
 そのような中で山形市では、中心市街地に残る歴史的・文化的資源や景観資源の活用を第一に掲げ、交流人口増加に向けた具体的な取り組みを推進しています。
 基本計画で掲げる活性化の方針は、(1)「まちなか観光」「イベント」によるにぎわいの創出、(2)人の温もりを中心部に誘導する「まちなか居住」、(3)特色ある商業の振興、の3本柱で、その手段として5つの戦略を掲げていますが、今回その1つとして掲げられた「新名所」3か所の内の2か所を訪問してきました。
 ちなみに、国の重要文化財に指定されている大正5年に県庁として建てられたレンガ造りの「文翔館」は、一般公開されるとともに、研修施設として県民に貸し出しされています。
 訪問した日は、ちょうど「さくらんぼまつり」のメイン会場として使われ、山形市のランドマーク的な存在でした。

(1)山形まるごと館「紅の蔵」
 山形まるごと館「紅の蔵」は、山形の特産品であった紅花商人の旧家の母屋と5つの蔵を利用した街なかの観光拠点として整備されました。
 山形産品のお土産物産館、旬の産品の直売所、地元食材を使った料理を提供するカフェ、郷土料理を楽しめるそば店と観光情報を提供する情報館が集められ、訪問したのは日曜日の午後ということもあり、いずれの施設も賑わっていました。
 戦災に合わなかったことで、歴史的な建物が残されていることが山形市の特徴でもあり、これらの建物を活用しようというのが最近の動きのようです。
 この建物の裏手には、JAが運営する「おいしさ直売所」が設置され、農産品や加工品などが販売され、無料駐車場も整備されています。
 この施設の運営管理は、(一社)山形市都市振興公社が担っていますが、山形市が出資するまちづくり会社で、不動産開発などの事業も取り組んでいるようです。
 観光客だけでなく地元の方々にも利用されていることで、平日の入込みにもつながり、周辺の人通りにも貢献しているように感じました。
 昼食でいただいたのが、「板そば」というざるの代わりに木箱を使った器で提供される冷たいそばで、これが山形風なのだそうです。
 ちなみに、この「紅の蔵」の前の通りは、旧県庁や七日町など中心街につながる一方通行の道路で、自転車専用レーンが設けられていました。

(2)七日町御殿堰再開発
 山形市は、扇状地に広がる城下町で、その生活用水や農業用水の確保のため、東部の山裾から網の目のように石積みの用水堰が118㎞にわたって築かれていたということです。
 今では、そのほとんどがコンクリート水路になり、また市街地では暗渠となり、山形固有の景観が見られなくなっていました。
 その景観を再現するとともに、歴史や文化を伝える場所として、商業を含めた再開発が行われたのが、七日町という中心商店街の一角にあります。  資料によると、御殿堰は、土地は国有地、管理は市、水利権は御殿堰水利組合が持ち、開発しようとする地区は防火地区のため純木造建築は建てられないという制約のある場所であったということですが、「山形にしかない魅力をつくり上げたい」という関係者の強い願いを背負って、地元で呉服店やブティックを経営していた結城さんという方が、私財を出して再開発会社を立ち上げてプロジェクトを推進されたようです。
 地元企業の技術力で、防火地区の基準に合わせた木造2階建ての建物が建設できたことなど、オープンするまでにはいくつもの苦労があったようです。
 実際に、現地を訪問してみると、水辺で遊ぶ子供たちがいたり、木造店舗の下屋の日陰で休憩する家族連れが見られるなど、市民の方々にとっても憩いの場所になっているように感じました。
 入居している店舗は、呉服店、カフェ、そば店、寿司店、雑貨店、茶店、織物工房などで、山形カロッツェリアプロジェクトを推進している工業デザイナーの奥山氏のショールームもあります。
 中心街にあった身の丈再開発のモデルとして大いに参考になるプロジェクトです。

(峠岡伸行)

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山形市の中心市街地

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市街地西部に広がる山形城跡と公園

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山形市中心市街地エリア図

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