2013-09-13
先日、奈良市であった会議のついでに、市内中心部の商店街を散策し、以前、奈良県の診断士協会を訪問した際に見かけた「起業家支援施設」を訪問してきましたので、ここでご紹介させていただきます。
この起業家支援施設「夢CUBE」は、奈良市中心部にある古くからの商店街「もちいどのセンター街」の中にあり、ガラス壁を活用したプレハブのような箱型の建物がいくつか設けられ、それを10~20m²の区画に分けて10区画の創業者向けレンタルスペースが提供されています。
資料によると、閉店したパチンコ店の跡地をもちいどのセンター街協同組合(商店街)が買い取って施設整備し、これまで店舗を構えたことのない起業家を募集し、月3~5万円程度で3年間貸し出しているもの。出店者は、雑貨やアクセサリー、カフェなど多様で、現在は9店が入居している。
平成19年4月にスタートしたこの事業も6年が経過、第1期、第2期の「卒業生」を排出し、この「夢CUBE」近くの店舗に移り定着しているお店も多く、また若者の集客につながったことで、センター街の通行量も以前の1.3倍に増えたとの話も聞かれた。
行政発でなく、地元の力の結集によって設置、運営しているからこそ継続している事業であり、「空き地」を恒常的な賑わいにつなげる事例として興味深い取り組みである。
この「夢CUBE」が成功したことがきっかけかどうかはわからないが、ちょうど「夢CUBE」のアーケードを挟んだ反対側に、今年2月に設置されたのが「夢長屋」で、こちらは奈良県内の民間企業(アパレル関係)が建設している。
真ん中の通路を挟んで両側に分かれて長屋建てに建てられた店舗は、13区画の店舗とイベントスペースが設けられ、雑貨を中心にカフェやパン店などが入居している。
新聞記事(産経新聞奈良版)でのコメントではあるが、建設した企業の経営者は、「商店街の真ん中を空き地にしておくよりは、少しでも活性化につながる施設にしたいと考えた。新しい人が才能を伸ばす場に」と語っている。
これまでを振り返ると、空き店舗や空きビルを活用した起業家支援施設の取り組みは続かないケースも多くみられたが、この「夢CUBE」や「夢長屋」の事例を見ると、起業家向けのスペースは、大き過ぎず、また一つ一つの店舗が通りから出入りでき、家賃も手ごろなことが必要で、新しい明るいイメージが発信できる場所であることも重要なポイントではないだろうか。
2つの施設とも地元が立ち上げ、商店街などの関係者が多面的な支援をしていることが、起業家の事業が継続し、街の賑わいにつながっている大きな要因であると感じた。
(峠岡伸行)
奈良市中心部の
「もちいどのセンター街」の中にある
「夢CUBE」
1区画10~20m²の小店舗が
10区画設けられている
商店街や通路に面した壁面は
全てガラスで、中が見える構造に
10区画のキューブの一番奥の2階には
「もちいどのセンター街協同組合」の
事務所も整備
民間企業が整備した夢長屋も満室に
長屋建ての建物を区切って13の店舗と
イベントスペースが設けられている
雑貨店が多く出店し、
若者や女性客を集めている
建物には、関わった協力者の
銘板も取り付けられ地域の多くの方が
関わったことが分かる