2013-10-16
先日、仕事で福岡市を訪問した折に、少し足を伸ばして、佐賀市を訪問しました。旅行や仕事のついでで全国の県庁所在都市を訪問していますが、今回はちょっとインパクトと地方都市の危機を感じるものでした。
今回は、博多から高速バスで佐賀市を目指しました。西鉄バスで76分、1時間に2本以上のバスが運行され、片道料金は1,000円で、回数券を買うと700円程度になり、通勤用の定期は月30,000円となっています。確かに、佐賀駅周辺を見るとマンションが立ち並び、タクシーの運転手さんの話によれば「マンション価格は福岡県に比べ相当安く、最近は佐賀に住んで博多に通勤する人も増えている」という話でした。
ちなみにJRを利用すると、博多まで普通電車で約1時間、特急を使っても約40分という近さで、距離感からいうと、福井-金沢間のようなものです。
現在長崎新幹線の建設が進められていますが、JR佐賀駅ではそんな気配が全く感じられず、九州・山口の産業遺産の世界遺産登録に向けた動きを紹介している程度です。
そんな印象を持ちながら、佐賀市の「中心市街地」と思われる地域を散策してみました。
佐賀市中心市街地活性化基本計画によると、中心市街地エリアはJR佐賀駅から佐賀県庁に至る174haで、福井市の105haに比べ広くなっています。街の成り立ちを想像すると、佐賀城を中心として商業ゾーンや市街地が形成され、その市街地のはずれに鉄道駅が設けられたことで、その間にいろいろな都市機能が集積していったのではないでしょうか。
近年になって、郊外型大型SCの出店やロードサイド型店舗の増加によって、衣料品を中心とする消費は郊外型にシフトするとともに、福岡市との高速交通手段が急速に進展によって、ファッションやアミューズメントは週末に博多でという動きも活発になって、中心市街地商業は衰退していった、といった地方都市のストーリーを象徴するような市街地の印象です。
以前から聞いていた佐賀市の大きな課題は、中心商店街の中にあった大型店の撤退跡の活用でしたが、今回訪問すると8階建のオフィスビルの建設が進んでいました。
福井に戻ってネットで確認したところ、佐賀市が土地を取得して、民間会社に開発運営を委託しビルを建設、佐賀商工会議所など公的機関の入居を進めている、という内容でした。
既に、ハローワークも近接地に移転新築され、「業務機能の集約」が進みつつありますが、近くに合った総合病院は郊外に移転するなどちぐはぐな印象で、百貨店やスーパーは中心市街地で頑張っているものの、個店としての商業や商店街は衰退し、商業の再生は厳しいのではないかと感じました。
残念ながら、中心商店街はシャッター街化し、商業店舗の後にテナントが入っても夜型飲食店のみという状況が見られ、これが商業衰退後の中心街の姿か、と実感しました。
このアーケード商店街に近接する集合住宅と一体に建設された商業ビルは、オープン当初のキーテナントが退店し、その後誘致したテナントも再度退店となって、空店舗となっていたようで、現在は3階には市の多目的ホールと地元新聞社の文化センターが、2階にはクリニックや観光協会事務所、保育園や子育て支援施設が、1階にはスーパー、飲食店、旅行代理店などが入居しています。
このビルの場合は、上部に住宅を持ちながらも、1階以外の商業が維持できなかった例として、しっかりと受け止める必要があるのではないでしょうか。
街なかを歩くと、補助金を活用して整備されたような広場や施設が目に入りますが、そこに人やソフトがあまり感じられない状況にあります。
路線バスの運転手さんのお話では、「長崎に行くのに通り過ぎるだけで、観光客もあまり立ち寄らない」という地域だそうで、私が訪問した土曜日の午前中に見かけた観光バスは1台だけという状況でした。
しかし、佐賀城の本丸御殿の復元を行うなど佐賀鍋島藩の歴史を活かす取り組みや戦災に合わずに残った街並み、江戸時代の区割りを残す水路などを活用した街歩きコースづくりなど、少しずつ交流人口拡大に向け進み始めている印象を受けましたし、佐賀城本丸歴史館では多くのボランティアガイドの皆さんが生き生きと活動されている姿を拝見し、商業衰退後の街の活性化に向けたヒントを伺えた気がしました。
これまで、中心市街地活性化に関わる多くの人たちは、数少ない成功事例を視察し、「羨ましい」と感じただけだと思いますが、厳しい状況の事例を見ることも、その街に関わる人たちの結束を高めるのに役立つはずですし、厳しい中でも頑張っている人の話を伺うことも重要ではないでしょうか。
街を活性化させるのは施設ではなくそこに集まってくる人であって、もっと「人」に注目した「場」づくりを意識しなければならないと感じました。
(峠岡伸行)
JR佐賀駅の中心市街地(南)側出口
駅前広場から市街地方向を見ると、
ビジネスホテルと生保ビル、
マンションが目立つ
中心商店街のしらやま名店街では、
大型店も撤退し、
商店のシャッターも降りたまま
大型店の撤退後の空き地は、
市が取得して商工会議所等が入る
オフィスビルを建設中
アーケード商店街の中では、
夜型飲食店やスナックなどの出店が
多く見られる
集合住宅下の商業フロアは、
キーテナントの退店後に誘致した
テナントが再度退店し、
現在は文化センターや
クリニック中心の構成に
呉服元町商店街にある屋根付き
広場は、あまり使われていない様子
佐賀城の本丸御殿を復元し、
歴史館として無料で一般公開