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ベトナムの国民性と中小企業の進出の可能性

2014-3-4

 平成26年2月12日から16日にわたって、ベトナム・ホーチミンを訪れた。訪れた第一印象は、「バイク、バイク、バイク」である。そして交通信号のない交差点を左折(日本と逆)の時も恐れず合流していく躍動感は新鮮ささえ感じた。3,000万台という台数は、それでも大人の2人に1台の保有率であるという。国内産業で賄えるのはバイクぐらいであるというのも納得できる。
 今回視察で訪れたのは、JETROホーチミン事務所、ダイムベトナム(第一ビニール)、ニッカベトナム(日華化学)、フクビベトナム(フクビ化学工業)の1機関3社である。
 順を追って内容と考察を加えたい。

①JETROホーチミン事務所(経済連携促進アドバイザー栗原善孝氏)
 JETROを訪問し、同国の経済や歴史、数々のデータにより説明を受けた。記憶に残ることは、「原油輸出、製油・石油製品輸入」「経済政策の未熟さ」「今後の投資可能性は大」という点では納得感を得た。
 しかしながら、人口構成の変化を見ると、2030年にはベトナムにおいても「少子化」の傾向が見られ、国の経済的発展もその道は険しいような感覚を抱いたことも事実である。

②ダイムベトナム(小林秀夫社長、庄田弘一ゼネラルマネージャー、他)
 ダイムベトナムの主製品は、「園芸用の支柱(竹)」である。ビンズンの工業団地に約2年前に進出している。工場は造管ラインと樹脂部品(射出成形)、検品、梱包などの作業に分かれているが、作業は労働集約的である。
 海外経験の豊富な庄田マネージャーからは、「ベトナム人はプライドが高い」という言葉があり、「褒めてから注意する」ことが大事であると指摘された。また、同氏からは、海外勤務では、自己管理>危機管理>業務管理の順に大事ということで、日本で働いている労働者との価値観の違いについて学んだ。

③ニッカベトナム(布施信哉氏、松下和夫氏)
 ニッカベトナムは2004年に進出ということで、今回訪問の3社の中では最も先駆けて進出した企業である。製造品は、国内(ベトナム)向けの染色材料である。ベトナムの繊維産業は縫製が中心であり、生地製造の市場はまだまだ小さいということであるが、今後中国や韓国、台湾から生地製造(糸製造、編織、染色加工)の進出もその見通しがあるとのことである。
 工場は副工場長に現地人(日本語が分かる)を登用し、日本的経営(顧客満足、品質重視、納期遵守、クレームゼロ)を実践している点が注目点である。従業員の福利厚生や人材教育なども日本的経営の良い点であると感じた。

④フクビベトナム(長尾博之社長)
 進出してまだ1年未満の会社である。4ライン稼働できるうちの2ラインしか稼働していないものの、現地需要を掘り起こすことに成功し、今後増産の計画があるとのことである。
 工場は3交替の24時間稼働で、スタッフも管理部門やマネジメント層は日本語が堪能であるため、社内公用語を日本語にしているという。当社でも、従業員の福利厚生に力を入れていることを聞き、同国における労務管理の重要性について理解を深めることとなった。

(総評)
 全体的には、工場内の稼働状況や生産性については日本国内ほどのレベルの高さは見られなかったものの、中小企業にとっては良い勉強になるかもしれない。工場内の整理・整頓など5Sの考え方は導入されているし、従業員のマネジメントも逆輸入できる点かも知れない。福井の日華化学やフクビ化学工業は上場企業であるのに対し、現地法人はまさに「中小企業」を見ているようであった。
 しかしながら、日本の中小企業が進出できるかというとその道は厳しい。営業力やマネジメント力、資金力が必要なことは言うまでもない。文化の違いや現地人のマネジメントに関しては苦労が絶えないであろうと思われる。
 中国への進出が労働力の高騰で一段落したところで、今後日本の中小企業がベトナムへ進出することは自社の発展だけでなく、ベトナムの経済発展を下支えする気持ちがないと困難な道になるのであろう。

(竹川 充)

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街に溢れるバイク、バイク、バイク

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工場の生産設備や作業風景を見学

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布施、松下両氏から
ニッカの取り組みを伺う

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フクビの生産ラインについて説明を伺う

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