2014-3-18
ベトナムを進出先として捉えた場合の最大の魅力は「人」である。まずはそのボリューム。ASEANで第3位、約9千万人の人口を抱える。しかも若い。ベトナム戦争の影響もあり、人口における若年者の比率が高い。また、女性の社会進出意識も高い。さらに、日本と同じ大乗仏教の国であり、習慣や思想面でも他教の信者が多数を占める国よりくみしやすい。
そして今回の視察で何より強く感じられたのは、その「真面目」な国民性である。一緒に仕事をするに際し、価値観等でのギャップは否めないものだが、一旦理解しあえれば、他のASEAN諸国に比べて「感覚の違い」に戸惑うことは極端に少ないものと思う。日本人と相性のいい、安くて豊富な労働力は生産拠点としてみた場合の大きな魅力であり、そのボリュームある人口が購買力を付けてきていることは市場としての魅力だ。
生産拠点としてみた場合のリスクとしては、その賃金上昇率の高さが言われる。しかし、それはベトナムに限ったことではない。それよりは、マネージャークラスの人材が少なく、その人件費が割高なことがネックであろう。
また、社会主義国としての諸手続きの煩雑さ、汚職問題などもデメリットと言われるが、実際には少額の付届けで解決するようで、予算化して考えるレベルのものとのこと。現地での原材料や部品調達の困難さの方がリスクとしては大きいと感じられた。
マネージャー層の賃金水準が高いことは、市場としてみた場合は魅力となる。この1月にオープンしたイオンモールを視察したが、その価格は食品を除けば日本より高いぐらいである。その賑わいぶりは、購買力の向上を感じさせるものであった。日本など先進諸国と変わらない品が大衆の目の前に並ぶことは、その購買意欲を高めることは疑いなく、近い将来の市場拡大の可能性を感じさせる。
一方で、もどかしさを感じるのは、他のASEAN諸国に比べて低い経済成長率。高いインフレ→異常な高金利→内需低迷・不良債権増、といった負のスパイラルを生むなど、ベトナム政府が経済をコントロールできていないことは市場としてのリスクである。
今回の視察で個人的に最も感じたことは以下の2つである。一つは、先に述べたベトナム人の素直で真面目な資質が、日本式の「社員は家族」的なマネジメントと整合性が高いということである。
実際に、今回訪問した福井県の3つのメーカーも、試行錯誤しながら日本式のマネジメントで手応えを感じている。この要素は中国などと比べて労務管理のストレスを少なくするであろう。「5S」や「カイゼン」など日本式の品質管理の仕組みも導入しやすいと思われる。
もう一つは「日本はアジア圏」ということである。普段、福井県内企業の内的な課題にだけ接していると、日本がアジアの一員という実感はなく、先進国と新興国というギャップの方を漠然と感じるのみであった。
しかし、このベトナムへの日本または韓国企業の進出状況を目の当たりにすると、日本にとってもベトナムにとっても、各々が属する「アジア圏」というものが明確に存在していると改めて理解した。そして、ベトナムの若さと活気を見るにつけ、そのアジア圏は急速に成長拡大している。
福井県内企業も、アジア圏を生産・市場の両面から強く意識していく必要性があることを痛感した。自身にもその意識が低かったことを反省させてくれる、有意義な視察となったことを感謝したい。
(川嶋正己)
オフィスで働く管理者には女性が多い
工場内には、部材、在庫が積まれる
持ち帰り寿司店には大行列
ガソリンは約120円/ℓと高額
工場入り口に張られた「改善」看板
溢れるバイクの群れに活力を感じる