2014-3-28
今回の視察旅行に前後して、BS放送などでベトナムを旅する番組が相次いで放映されるなど、観光地としてのベトナムも注目されつつある。その視点で今回のホーチミン視察旅行を振り返ってみる。
宿泊については、海外資本の高級ホテルも整備され、そのサービスレベルも評価できるものである。それらには大抵、日本人スタッフも常駐している模様で、心強い。バラエティに富んだ現地料理に加え、フランス統治下にあったことからフレンチ系の食にも定評があり、食の面でも、他のアジアの国々に比べて日本人の満足度が劣ることは無いものと感じられた。
スタッフのサービスについても、明るい笑顔には欠けるが、概して誠実さや真面目さが感じられ、日本人にとっては、アジア諸国の中では最もストレス無く過ごせる国の一つかもしれない。
治安については、凶悪犯罪は少ないもののひったくりやボッタクリについての注意が再三なされるなど、悪化傾向にあるところは気になる。しかしこれも、他のアジア諸国との比較の上では、大きくマイナス材料になるレベルではないと思われる。
ベトナムは日本同様、南北に長い国土であり、世界遺産は中部地区に多いため、ホーチミンからの移動は距離・時間を要する。ホーチミン市内の観光としては、市内にあるベトナム戦争関係の施設や、市場等の散策が中心となる。小粒な感もあるが、日本人が異国情緒を感じるに十分な魅力を備えている。
さらに魅力を感じるのであれば、ホーチミン市の郊外へと足を伸ばし、メコンデルタを尋ねるのが定番。今回はミトーという移動時間2時間弱の街への日帰りツアーに参加したが、大型バスが多数訪れ、欧米系の観光客も非常に多く、定番ツアーとして広く認知され、根付いていることが窺えた。
このような日帰りオプションツアーは他のアジア諸国でも多く見られる。今回のツアーは、モーターボートで大河を横断して中州の島へ渡り、その村を散策しながらフルーツやココナツキャンディー、ニシキヘビや現地女性の歌と音楽などを楽しんだ後で、手漕ぎの小船に乗って川を下るという流れ。すごい数の小船が行き交い、秘境感は感じられないが、それなりに楽しい。
最後は、見た目にインパクトのある名物魚料理のランチで締めとなる。中州の島の住人はほとんどこのツアー関連で生活していると思われるぐらいで、誰もが楽しめ、かつ、効率よくこなせるようにシステム化されている。誰でも気軽に楽しめるレベルにまとめられている分、驚きや感動を期待する向きには物足りない。「体験」感を高めるプログラムを組み込むなど、リピーターの獲得には今後に工夫の余地がある。
日本からの海外観光旅行の対象としてみた場合、既に、十分に人気となるレベルにはあると考える。ベトナムに対する認知度・注目度が高まり、敷居が低く感じられるようになれば、ベトナム旅行がブームになるかもしれない。その場合、例えば観光客向けの犯罪が増えたり、オプションツアーの受け入れが飽和傾向となって質が低下したりなど、新たな問題が起こることも考えられる。それらにどのように対策を講じながら拡大させていけるかが課題であろう。
県内企業や自治体にとっては、このオプションツアーの企画や運営が参考になる。乗り物に乗るという”体験”、自然(景観・植物・動物)、食、産業、音楽、現地の民俗・衣装など幅広い要素が「メコン川」というテーマの中で統一感を持って網羅されている。
一つ一つは弱くても、一塊となることでメコン川の全体を体験したような感覚を与えることができる。また、現地の主催旅行会社や企画の細部、発着時間に違いはあっても、実務を担う現地の”キャスト”たちは効率よく動けるような仕組みが作られている。ある程度の需要があるからこそできるとも言えるが、運営のヒントにできる要素は多い。
また、どれだけさりげなくお土産購入につなげられるかも重要だが、その面でも良い点悪い点ともに参考になった。
このようなツアーは、ガイドの力量に影響される面が大きいが、現地の実務スタッフ等とのコミュニケーションを増やすことで、その影響を緩和したり、さらに魅力を高めたりできるとも感じられた。
(川嶋正己)
ベトナム料理の代表 生春巻き
小舟に乗り換えて行くメコン川ツアー
ニシキヘビと記念写真
見た目からインパクトのある魚料理