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和歌山市の中心商店街を訪問 −衰退する商店街と大型店、JR駅への集積−

2014-06-27

 会議で久しぶりに和歌山市を訪問したついでに、「ぶらくり丁」をはじめとする中心商店街や南海とJRの和歌山駅など市街地を歩いてみました。和歌山市は、現在でも人口37万人を誇り、中心には和歌山城が残る地方でも大きな都市の一つですが、今回は街の印象をはじめ駅周辺の動きについて感じたところを紹介したいと思います。
 まず、JR和歌山駅周辺からですが、地元の方の話によると、元々東和歌山駅と呼ばれ、市街地の東のはずれにあったところが、複数の鉄道路線の結節点であったことで和歌山駅と名称が変更され、その後に周辺の開発が進んだとのことです。
 駅の市街地側には、近鉄百貨店とJRが運営するホテルグランヴィア和歌山があり、和歌山城に向かって街路樹の整備された片側3車線道路が延びています。
 新しい駅(もう新しくもないのですが)のせいか、周辺に小売店舗は少なく、オフィスビル、マンション、学習塾、クリニックが多く見受けられ、飲食店も地元色は少ない状況です。
 県庁所在地のどこの駅を降りても、ビジネスホテルと全国チェーンの居酒屋が目につき、たぶんに同じような風景になりつつあるのではないでしょうか。和歌山市で感じたのは、JR駅東側は開発が遅れた分、ビジネスホテルや学習塾が展開しやすかったのか、他の都市に比べても多いようで、 人の動きや投資は、JR和歌山駅に向かって動いているように感じました。
 和歌山市には南海電鉄も乗り入れており、南海和歌山市駅にも行ってみたのですが、駅に入居している高島屋百貨店が撤退することが決定したとのことで、周辺の商店にも活気が感じられず、地域的に寂れてきたようです。
 要因として、イオンモール和歌山(延べ床面積127,000m²)が、今年3月に同じ南海電鉄沿線(和歌山市駅から普通電車で7分)の和歌山大学前駅に直結する形でオープンしたこともあって、人の流れが変わったことが考えられます。
 さて、その土地の勢いを見る時に、最近はコインパーキングの料金を比較するとわかりやすいので注意しているのですが、JR和歌山駅周辺は1日上限1,000円、南海和歌山市駅周辺では上限600円のところも見られ、街の発展が東に向いていることが感じられます。
 一方、中心商店街の「ぶらくり丁」では上限500円のところも見られ、オフィス街に近い市営駐車場でも1日上限800円という状況です。
 また、JR和歌山駅とぶらくり丁の間にある飲み屋街では、「昼間最大200円、夜間最大600円」のコインパーキングも見られ、空き地が増えて駐車場が供給過剰になっている状況が窺われました。
 では、その中心商店街だった「ぶらくり丁」の現状はというと、シャッター通りというだけでは表現できない衰退ぶりでした。
 「ぶらくり丁」も、東、中、北などいくつかのアーケード商店街に分かれていて、それぞれ歩いてみたのですが、いずれも厳しい状況にあります。
 紀陽銀行本店に近い「ぶらくり丁商店街」の西側入口には、空き店舗が並び「家賃5万円」の看板が見られるほか、高齢者向けの婦人服や雑貨店がかろうじて見られる程度になっています。
 それ以外に目立つのは、行政が運営支援する地場産ショップ、ジョブカフェと治療院。今回、中心商店街ではじめて見かけたのは、空き店舗を活用した高齢者のデイサービス施設で、このような施設が増えてくると、若者にとって魅力は感じられなくなるのではないかと感じました。
 オフィス街に近いこともあってか、昼食や夕食の需要を見込んでの飲食店の出店は見受けられ、また、最近オープンしたリサイクルショップは見受けましたが、昼間はほとんどお客さんの姿が見えない商店街の中で、新規開業して経営していくのは至難の業とも感じたところです。
 需要がなければ商売は成り立たないし、土地や建物の賃料も値下がりしていきます。和歌山市の中心街で起こっていることは、マイナスの連鎖であり、これをプラスに転じるためには不動産オーナーの連携による利用の幅を広げた新たな街のユーザーの開拓ではないでしょうか。
 ただ、少し羨ましいと感じたのは、中心街にいて感じるのは、和歌山城の存在。地元では、市内唯一の観光地と言われていますが、和歌山市のシンボルになっています。
 和歌山ラーメンのお店には行列もでき、和歌山電鉄は「たま駅長」で人気を集めていますが、観光を含め地域にある小さい魅力の種を繋ぎ合わせ広げることが、地方都市に共通した活性化の方策かもしれません。

(峠岡 伸行)

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市街地北側にある南海和歌山市駅

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飲み屋街に近い
コインパーキングの料金表

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和歌山一の繁華街だった
「ぶらくり丁」商店街

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商店街にある3セク運営の
地場産ショップ

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街なかの通りからは和歌山城が見える

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