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タイの進出企業を訪問(海外視察研修レポートその3)

2015-3-3

タイの社会・文化にふれて

1.バンコク市内
 初めて訪れるタイ、神秘的でエキゾチックなイメージを持っていましたが、訪れてみるとまず、ここは日本ではないかという錯覚を覚えました。
 その理由は、バンコク市内を走るバスの車窓から見た風景、片側5車線はある広い道路を行き交う自動車の90%が日本車だったことによります。タイは、規格の関係で軽自動車が走っていません。信号がかわって一斉に走り出すオートバイの大群以外は、日本以上に日本車が多いかもしれないとさえ思うほどでした。
 それでも、世界の都市で5番目という渋滞のすごさには驚きました。大型の車の間を縫うように、次々にバイクの2人乗り、3人乗りが行きます。道路標識も少なく、警官の誘導も見かけなかったですが、見渡す範囲では交通トラブルは見かけませんでした。後で、現地駐在の方にうかがうと、やはり交通事故は多く、トラブルになると大変とのことでした。

2.ジェトロバンコク事務所にて
 ジェトロバンコク事務所でうかがった話によると、日本企業のタイへの進出は、1985年頃から始まったとのことです。1986~1995年のタイの実質GDP成長率は平均9.2%と高い数値になっています。日本からは大企業が進出し、タイでは直接投資が急増、輸出指向型の企業の進出により生産と輸出が急拡大しました。
 1997年のアジア通貨危機の頃を境に中小企業や家電メーカーが進出するようになりました。このころには大企業は進出済となり、中小企業単独での進出です。1999~2008年のタイの実質GDP成長率は平均4.7%となっています。外貨導入による輸出に加え内需の拡大も狙うが、輸出に頼る状況でした。
 そして、2009年リーマンショック、2011年タイ洪水と実質GDP成長率は落ち込みましたが、この頃より小規模企業の進出が進んでいます。現在、タイでは自動車産業に携わる人は約53万人となり、サプライチェーンはでき上がっています。BtoBはオーバーキャパといわれ、競争が激化しています。
 一方、BtoCという視点でみると、数年後にはASEANが日本のGDPを上回る予測です。ASEAN、そしてタイは日本にとって欠かせない存在といえます。タイから日本への観光客は去年約64万人とのことでした。また、2020年にはタイの富裕層は2009年の3倍に、アッパーミドル層は2倍に増える予測だそうです。社会環境という面では、人件費の上昇や人手不足、少子高齢化、女性の社会進出に伴い晩婚化が進んでいるとのことでした。

3.タイの文化
 数日訪れるだけでは、なかなかタイの人々や文化に触れることは難しいですが、以下に今回、見て感じたことを挙げます。
 タイでは、日本のアニメやキャラクターが人気だそうです。ハローキティを抜いてドラえもんが一番人気だとか。ドラえもんを全面に描いた自動車やナンバープレートにキティの装飾をした自動車なども見かけました。また、一面に大きくアニメが描かれた大型バスがよく走っていました。これは日本のアニメかは不明でした。
 タイは仏教国で、国民の90%以上が仏教徒です。また、仏教とは別に、それぞれの家や企業の建物には、玄関の右か左の角にバラモンの神様をまつった建造物があり、花などで飾られています。日本で、家に仏壇があって、神棚もあるという感覚なのかなと想像しましたが、ガイドの方はその建造物を「祠(ほこら)」と訳していました。非常に信仰心の篤い国民性がうかがえます。視察研修で訪問した福井県から進出している企業でも、工場の敷地内にこの建造物を設け、現地駐在の方が率先して礼拝しているとのことでした。
 福井鋲螺タイ工場でうかがった話では、タイ進出にあたり、国民の気質に関してよく調べたそうです。心地よく仕事をしてもらえる環境をどう整えるかということに心を砕いたのです。その中で目にしたことのひとつに、20歳くらいの若者でも、電車の中から遠くに見えるお寺に対して手を合わせる姿があったそうです。
 そのように信仰心があつく、穏やかな国民性であることが進出を決めるポイントの一つになったのかもしれません。また、タイの人が大事にしていることを同じように大事にするという姿勢で、現地に溶け込む努力を、日本の企業としてやっていることを感じました。
 これだけ仏教徒が多くを占める国ならば、一律な気がしますが、多様性にも対応していると感じたことがありました。ペットボトルの水の4種類を手にする機会があったのですが、そのどれにも、ハラル認証のマークがついていました。
 その他にも、日本でも参考にしたいことがありました。タイには、銀行のATMが日本の数以上あるとのことです。どこの銀行を使っても、そして24時間いつ使っても手数料は無料、しかも言語数も多く、システムは日本より充実しているようです。タイは、ミャンマー、ラオス、カンボジア、マレーシアと国境を接しており、人の行き来を単純に日本と比較することはできませんが、国際性や利便性で日本での課題があると感じました。実際、訪れた観光地の「アジアティーク・ザ・リバーフロント」や世界文化遺産の「アユタヤ遺跡」には、目につくところにATMがあり、観光客が利用しやすいように配慮されていると感じました。

4.スーパーマーケットでの買い物
 滞在したホテルの近くのスーパー、トップス・ロビンソン店は品揃えが豊富で、旅行者や在タイ外国人にも人気があるのがわかる気がします。日本のメーカーのタイ向け味付けのインスタントラーメンや、不思議な日本語表記のついたおつまみ風の食べ物などを購入しました。
 レジでは、前に並んだ欧米人の女性が、ポイントカードを出していました。私の番がきて、レジ担当の人に「ポイントカードは持っているか」と聞かれました。レジのところに案内画面が出て、「1バーツ=1ポイント」とありました。どういうサービスを受けられるのか、気になるところでした。

5.成長するASEAN、成長するタイ
 成熟しつつあるタイ、人件費が高くなり、高齢化も進んでいます。数年前は大洪水がありましたが、今年は一転、深刻な干ばつが起こっているとのことです。
 それでも、タイの成長のエネルギーがとどまることはないと思われます。その、ASEAN、タイのエネルギーをどう取り込むのか。ものすごいスピードで少子高齢化する日本、5年後、10年後の日本経済、地方経済をどうするのか。「観光客10人で日本人1人の購買額に匹敵する。年間の人口減少数×10の観光客をいかに呼び込むか。」というジェトロバンコク事務所でうかがった言葉をヒントに、取り組むべき課題がありそうです。

(藤野恵子)

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街中には日本車があふれる

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バスに描かれたアニメ

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工場入り口のスクリプトハウスは3基が正式

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ペットボトルの水や紙パック入りのジュースにハラル認証のマーク

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アジアティーク内のATM

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朝食は屋台が定番

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