福井中小企業診断士協会

福井県の中小企業診断士が企業の経営をご支援します。 福井中小企業診断士協会

フリーレポート

カンボジア(特に首都プノンペン)のインフラ状況

2016-03-01

1 プノンペン市内の道路状況と交通渋滞
 カンボジアの国道、特に一桁国道と言われる1号線~8号線の総延長は2,117kmで、舗装率は99%である。首都プノンペンからタイ国境のポイぺトまでを、カンボジアの中央部に広がるトンレサップ湖を挟み、北に国道6号線・南に国道5号線が走る。国道4号線と国道3号線はプノンペンから港湾都市シアヌークビルを結ぶ。
 また、国道1号線はプノンペンとベトナム:ホーチミンを、また、国道2号線はタケオ州を通ってベトナム南部へ、国道7号線・8号線もホーチミンを結ぶ。高速道路はまだないが、JETROプノンペン事務所では20年後は高速道路だらけになると予想する。
 プノンペン市内中心部は、ジャカルタやホーチミンなどの他の東南アジア都市と比較すると、思いのほか乗用車が多い。二輪車との割合は6~7割といったところである。
 乗用車はトヨタ車が首位を占めるがホンダ・マツダなど他の日本車やアウディ・BMW・ベンツといったドイツ車を中心とする欧米車も多い。トヨタ車ではレクサスやプリウスなどが多く、総じて高級車が多い。JETRO事務所によれば、プノンペンはリッチ層が多く、ホーチミンと比較してもリッチであるとのこと。
 進出したイオンモールが当初予定の駐車場2000台を急遽2800台に増設したことにも表れているとしている。確かにホーチミンのイオンの場合は二輪車駐車場が圧倒的である。市内の道路は独立記念塔のロータリーを中心に放射線状に配置されている。200万人規模の都市ということもあり、渋滞は多少あるものの、東南アジアの格都市と比較すれば苦になるほどではない。
 中心部から郊外の工場地帯に向かうと朝夕の通勤時間帯は渋滞がひどくなる。通勤は二輪車が多く、また、労働者を荷台に載せた無蓋車が数多い。ハル・プノンペンコミックセンターのあるプノンペン経済特別区までは、中心部から18km・車で45分の距離であるが、100分程度はかかる。
 プノンペンから東・北への移動にはトンレサップ川やメコン川がネックとなる。2015年4月に国道1号線のメコン川に架けられたつばさ橋やトンレサップ川を渡るカンボジア日本友好橋など、多数の橋が架橋又は計画中である。

2 鉄道など公共交通機関
 カンボジアの鉄道網は非常に貧弱であり、プノンペン~シアヌークビル間の南線とプノンペン~ポイぺト(タイ国境)間の北線の2本のみである。南線についてはリハビリ工事が完了し、真新しいバラストが敷かれ、1日1本の貨物列車が運行している。プノンペン経済特別区の東側を走りシアヌークビルへ南下している。北線については内戦の影響もあり、シソポン~ポイぺト間48kmについては線路も失われているが、訪問中の2月19日、日本人材開発センターで、今年末までにタイ国境までのリハビリ工事を完成し、開通させるとカンボジア・タイ政府間で合意したとのニュースが飛び込んできた。
 プノンペンから北のコンポンチャムを通りベトナムに抜ける225kmについては既存の鉄道網は全くなく、唯一の欠落部分となっている。概して東南アジアでは鉄道網は投資金額も大きいこともあり計画が後回しとなっている。バンコクなどにおいても、アジア通貨危機以降ほったらかしとなっていた鉄道網の整備がようやく進み始めた段階であるが、カンボジアでは内戦の結果とはいえ国際的な注目度も高く、国際支援による鉄道復興は意外と早いかもしれない。

3 電力網について
 プノンペンについては電力を民間IPPの小型のディーゼル発電所とベトナムからの輸入に、また、バッタンバン、シェムリアップ、ポイぺトなど西部はタイからの電力輸入に頼っており、電力網は非常に貧弱で、電気料金は高いものとなっている。JETROによるとあと3年程度で発電所の建設や送電網が完成し、4~5年先には他国と電力料の格差はなくなる見通しという。
 プノンペン経済特別区には2万ボルト程度の送電線が入っているが、特区の広大さからすればあまりにも脆弱な供給網である。同様にTiner Fashion Cambodiaの立地する市内南部の工業地帯においても同程度の送電線があるのみで電力網の弱さは明らかである。JICA事務所では停電の話題も出たが、プノンペン市内は別として、地方や経済特区では依然として不安定な供給事情にあるといえる。主要供給先のベトナム自体も経済発展によって電力不足気味となっており、プノンペンの停電もベトナムからの送電線の故障による。政府による2020年までに水力・火力併せて3,576MWの計画があるが供給体制が整うかどうかが課題である。
 貧弱な電力網にもかかわらず、何棟か建ち始めた高層ビルは電飾が鮮やかであり、また、街路樹もLEDの電飾で飾られている。カンボジアの工業化にあたっては、電力は一番のネックである。

4 水道・下水
 プノンペン市内及びシェムリアップ市内は北九州市水道局の支援により浄水場が建設され、安全な水が供給されている。プノンペン市の漏水率は7~8%といわれ、日本同様の効率的な水道運営体系が持ち込まれている。
 プノンペン市内で出される生野菜や生水はOKということである。しかし、プノンペンでも郊外では水事情は激変する。Tiner Fashion Cambodiaの進出する南部の工場地帯では生水は飲めないし、野菜も洗えない。むろん、この2都市以外では水道の整備は進んでおらず安全な水の確保には苦労する。
 プノンペン市内でまだ下水道の整備は全くの手つかずで、今後の課題である。各事業所や家庭などから排水された泡だった汚水は、プノンペン市周辺部に点在する池に流れ込み、そうした水が井戸水として利用されている。汚水が浄化されずにまた飲料水として利用されていると考えられる。2都市以外の13の地方都市では公共水道が供給され、地方部でも約122の民間業者が商業ベースで飲料水の供給事業に参入しているといわれるが、とても安全な水が供給できる体制とは思えない。

(和田龍三)

Photo

朝のプノンペン郊外の通勤風景

Photo

イオンモールに増設された駐車場

Photo

プノンペン経済特区内の送電線

Photo

汚水の流れ込むプノンペン南部の池

一覧に戻る

ページの先頭へ