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スカーフとハラール(マレーシアレポート2)

2018-03-13

 マレーシアでは、イスラム教徒の女性の多くがスカーフ(トゥドゥン)を被っているが、訪問した日本料理店・勘八トロイカ店の支配人・矢部千春さんによると、女性の多くがスカーフを被るようになったのは1990年代以降のようである。
 イスラム教徒の女性たちは、基本的に肌を隠さなければいけない。そのために頭を覆うのがトゥドゥンと呼ばれる布であるが、どんどんファッションとして受け入れられるようになってきて、いかにファッショナブルにスカーフを着こなすかが関心事となっているようで、価値観が大きく変わってきているのではなかろうか。
 イスラム世界でスカーフが重要な役割を果たすようになったのは、1979年のイラン・イスラム革命以降である。それまでは、女性が顔を覆うスカーフは社会や文化の後進性のシンボルであり、「近代化=西洋化=世俗化」への障害であると見なされてきた。
 それが、イラン革命では反対に西洋の支配に対する抵抗のシンボルとなって、中東では1980年代から、マレーシアでは遅れて90年代から女性の着用者が増えてきたようである。
 もちろん、スカーフを着用しない女性も多く、勘八の従業員の女性も店舗ではスカーフを着けてはいない。国によっても様々で、中東の諸国のように全身を覆う国もあるが、6年前に視察したインドネシア・ジャカルタの大学では着用していたのは女学生の半分程度であった。
 かつては、スカーフは地方出身・無教育・低所得層として結び付けられることが多かったが、マレーシアの中進国への経済発展は、スカーフを着用する敬虔なイスラム教徒の一部が新たな中間層として成長したことにより、ファッション性の高いスカーフが求められ、中間層としてのアイデンティティと信仰心の両立を可能にしたのではないか。
 12日に訪問したイオンモール・シャーアラム店の小林副部長によると、シャーアラムはクアラルンプールとは異なり、民族構成はマレー系が90%となっており、スカーフを始め、スカーフの飾りの小物売り場や、ディスプレイで新たなイスラム教徒向けファッションスタイルを提案する店舗を揃えている。
 様々な民族が混じり合うマレーシアでは、他の東南アジア諸国のようにセンスは強すぎず、比較的洗練されたイメージである。イスラムファッションのハブ国となれるかもしれない。
 ところで、もう1つイスラム教徒で禁じられているものが、豚を食用とすることと、アルコールである。日本食では豚肉は出さなくても、アルコールは料理酒やみりんなどの味付けに使うので完全なハラール(豚肉・豚肉由来のエキスやアルコールの入っていないイスラム教徒にとって安全な食品)はハードルが高い。
 勘八ではポーク・フリーで売っているが、日本食なので酒やみりんは使っているとのことである。また、調味料でも醤油なども発酵食品であるため完全なハラールにすることはなかなか困難である。酵母がアルコールを出す直前で0パーセントの段階で発酵過程を止める必要がある。
 マレーシアでは政府機関であるマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)がハラール認証を行っており、マレーシア政府はハラールのハブを目指している。JAKIMさえ取れば世界のイスラム国に輸出可能ということである。
 JETROの菅原さんによるとマレーシアで120店舗を展開する日本食のすし金がハラール認証を取得している。認証を受けるまでに6年かかっているという。もちろん、初めての認定であり、手続きなどもわからず、時間がかかったということもある。
 また、昨年11月には和牛がハラール認定されている。熊本と徳島の屠場から持ち込まれるという。屠場では当然ながら豚の屠場とは分けられており、和牛のエサもハラールに触れるようなものは使われてはいない。和牛は100グラム3,000円程度で販売されており、オーストラリア産の牛肉100グラム1,800円よりはかなり高い。伊勢丹ジャパンストアの食品売り場でも和牛が売られていた。
 勘八の矢部さんによるとエアーアジアが北海道に乗り入れており、マレーシアの人の多くが北海道に行き、日本食を食べているので口が肥えてきているという。
 そのため、大トロや和牛などの高級食材の需要があるという。一方、商社の双日がロット・テン(Lot 10)」地上5階で、日系レストランを集結した「ジェーズ・ゲート・ダイニング(J’s Gate Dining)」を今年1月にオープンした。焼き鳥や鍋物、すし屋、ラーメン店など18店がリーズナブルな価格で日本食を提供している。
 矢部さんによると、客単価は10~30リンギッド(1リンギッド=28円)ということで、安く、誰でも食べられる日本食ができたということで、これから日本食も一番難しい局面に入っていくのではと、今後のマレーシアでの日本食レストランの展開の課題を指摘されている。
 最後の13日にシンガポール高島屋を訪問したが、消費面でシンガポールは他の東南アジア諸国とは別格である。シンガポールの世帯所得(2人)は月70万円であり、シンガポールの物価が高いので、ここ1、2年周辺国に行って買い物をしているようだとのこと。売れるものは時計・靴・バック・雑貨などが40%、服飾は20%で日本とは逆になっているとのことである。
 もちろん日本のような四季がないことが影響しているということはある。買い物の爆買いではブルネイの王様が5億円の買い物をしたとか、カンボジアの首相の子息の結婚指輪を5億円で購入したとか、店いっぱいの雑貨が全て買い占められたとか話題には事欠かない。


(和田龍三)

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日本食:勘八にて

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イオンモール・シャーアラム店で
ファッション性の高いイスラム教徒の
スカーフと小物売場

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イオンモールで
ハラール認証の日本食店

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シンガポール・マリーナサンズベイで
純金の干支の置物

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