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栃木・群馬の世界遺産・日本遺産を訪ねる~観光とまちづくりに貢献する企業~

2018-10-17

 福井県中小企業診断士協会の県外視察研修で、世界遺産として登録されている栃木県の日光東照宮、群馬県の富岡製糸場、小京都や小江戸として紹介される栃木市の「蔵の街」を訪問しました。

明治の殖産興業で造られた「富岡製糸場」
 明治5年にフランスの技術を導入して官制工場として建設された「富岡製糸場」は、輸出品である絹織物の原料となる糸の品質改良と大量生産を目指し機械化の取組みを進めたものでした。
 採算面では、当初より厳しいものがあったようですが、民間に払い下げられ、更に昭和62年に操業を停止してからも、企業がお金を掛けてこの工場を保全し続けたことで、平成17年の国指定史跡以降、富岡市への建物の寄附、土地の売却が進み、平成26年の世界遺産登録へとつながっています。
 現在も保存修理工事が続けられ、今後も相当の費用が掛かる見込みがある中で、文化財としての価値はもちろんですが、観光や産業面で地域経済への効果をどのようにもたらすのかが、今後の維持活動への取組みと密接につながっていくのではないかと感じました。
 また、この富岡製糸場の案内役として活躍するガイドの皆さんは「まちづくり富岡」に所属する検定を合格した方で、100名以上が在籍しているとのことでした。
 通常は、1時間毎にガイドツアーが実施され1名200円で参加できますが、今回の訪問ではグループに1名のガイドをお願いし1名500円でご案内いただきました。各地にもボランティアガイドの仕組みはありますが、観光客の視点でみると、自由に見学するよりもガイドからの説明を聞くことで、施設だけなく地域への理解が進みますし、地域の人と話すことで観光対象の背景への関心度も更に高まります。ガイドの意識と説明内容の向上、地域への経済効果という面からもある程度有料化を進めるべきではないでしょうか。
 世界遺産は、維持活動にお金と人手がかかるものと改めて感じた訪問でした。
 富岡製糸場の周辺には、市営の駐車場が数か所に分かれて整備されていて、そこから製糸場につながる通りには、土産物店や峠の釜めしで有名なおぎのやのレストラン、さらには軽食を販売するお店が並んでいて、群馬県の名物「焼きまんじゅう」も売られています。
 蒸かした饅頭を串にさし、甘くどい味噌が塗られて、少しあぶったものですが、200円と手ごろな値段で販売されていて、このような地元名物を食べるのも観光の楽しみとなっています。

商家が支えた栃木の「蔵の街」
 栃木県南部にあり木材問屋の水運で栄えた栃木市は、江戸から日光参拝の街道としても栄えて多くの商家の建物や蔵が残っています。
 ただ残っているというだけでなく、カフェや雑貨店、ジェラート店としても活用されていて、観光客だけでなく地域の消費者も楽しめるエリアになっています。
 特に、錦鯉が泳ぐ巴波川(うずまがわ)に沿って遊歩道が設けられ、街歩き客が「蔵の街」を楽しめるよう整備されています。
 また、栃木市には2年に1度、11月に開催される「とちぎ山車まつり」があり、祭りに使われる山車は、明治期に豪商が、地域の人たちに楽しんでもらおうと、東京の山王祭りに使われていた山車を購入したのが始まりで、町内ごとに9つの山車を抱えるまでに充実していて、いつでも山車と祭りの模様を楽しめるよう「山車会館」を整備しています。
 東京からの日帰り圏であることも相まって、多くのドライブ客が来るなど、小江戸で有名な川越にも勝るとも劣らない雰囲気を感じられる街(電線の地中化も進んでいます)になっていて、「お蔵のお人形さん巡り」といった商家に伝わる古くからの人形を店内に展示して観光客を店内に誘導するなど街ぐるみの取り組みが行われ、街の人たちの「観光」への意気込みと地域の連携が感じられた訪問でした。


(峠岡伸行)

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