診断士の視点

ガーデンシティから見たイオンモールのアジア戦略

2019.03.12 投稿峠岡 伸行

 これまで、ベトナム・ホーチミン、カンボジア・プノンペン、ベトナム・ハノイ、マレーシア・クアラルンプールのそれぞれの視察の際に、イオンモールを訪問してきました。
今回も、ジャカルタで2店舗目となるガーデンシティ店を訪問し、店舗概要や出店経緯などをご説明いただきました。
 東南アジア各国を訪問し、現地駐在員の皆さんとお話しすると、「イオンができて日本食が買えるようになり食生活が安定した」と伺えるなど、日本人駐在員の皆さんにとってなくてはならない生活インフラとなっているようです。
 インドネシアの最低賃金は、ワーカークラスで月3万5千円程、大卒の初任給が月4万5千円程と、日本の所得水準と比較すると1/4程度(一人当たりGDPは約40万円)とすると、日本製品は現地では「高嶺の花」で、実際に店舗を拝見しても衣料品のお店の人の入りはまばらな印象です。
 食品も、日本製品は価格が高く、地元の方々にはなかなか手が出しにくい価格帯になっています。
スーパーに並んでいるカップラーメンを見ると、半数以上が韓国のブランドで、日清の製品もありますが全てインドネシア製で、価格では60円程度と日本の半額以下ですが、インドネシアでは高額なものとなっています。
 JETROで伺った話ですが、インドネシアでは食品の安全基準が高く、輸入するにも製造工程の認証が必要(当然ハラール認証も別途必要)で、また、自国産業保護のための関税も高いので、どうしても日本製品は、日本人か現地の富裕層でないと手がでないようです。
 このような中で、イオンモール・ジャカルタ・ガーデンシティ店では、飲食店やフードコート、イートインスペースが拡充され、1階から4階までの各フロアに飲食店が配置されています。
 ガーデンシティ店訪問時に、4階のフードコートで昼食を食べたのですが、地元の飲食店が多く出店するとともに、日本の吉野家、現地の飲食チェーン店などが並んでいて、価格帯も「吉野家の牛丼」で3万9千ルピア(約300円)、私が食べた地元料理のプレートは3万5千ルピア(約280円)と、昼食は300円前後となっていて、地元の方々でにぎわっていました。
 ちなみに、セーレン訪問時に、現地の方々の昼食用のケータリング価格を聞いたのですが、一人100円程度ということで、それに比べれば高くなっていますし、現地の所得水準からすると高い価格設定になっていますが、衣料品を買うことを考えると、割安に「ショッピングモール」を楽しめる価格設定になっています。
 1階のお惣菜売り場には日本式のお弁当も販売されていて、天ぷら弁当が3万8千ルピア(約300円)、子供向けから揚げ弁当が2万5千ルピア(約200円)とちょっと高めなのですが、これも「ショッピングモール」へ出かけたついでに、ちょっと贅沢して、というような感覚で買われるのではないでしょうか。なので、買ったその場で食べられるようなイートインスペースが必要になっているのでしょう。
 ジャカルタには既に120のショッピングモールが出店する中で、イオンモールは今後10店舗まで出店する計画があり、食とエンターテインメントを中心に据える東南アジア共通の戦略になっています。
 ターゲットの中心は「子供」と「若者」で、子供向けのアミューズメント施設が大きなスペースをとっていて、国際大会が開催できるスケートリンクを設置しています。
 東南アジアに共通して感じることは、「子供」を大切にしていること。
子供が楽しむために、ショッピングモールに出かけることが習慣となり、所得水準が上昇した時に、買い物につながっていけばという戦略なのではないでしょうか。
 若者には、「インスタ映え」スポットを多くつくることで、来店頻度を高めることにも取り組んでいて、これも将来的に購買層に育っていくまでに、習慣化することが狙いで、消費市場の拡大に向けた先行投資を行っているのでしょう。
 「ショッピングモール」で過ごすという「時間消費の文化」を輸出しているのではないかと感じます。

  • 広い通路を挟んで店舗が並ぶ
    広い通路を挟んで店舗が並ぶ
  • モール4階のフードコート
    モール4階のフードコート
  • BENTOコーナーの横にはイートインが
    BENTOコーナーの横にはイートインが
  • ハートリングのオブジェの下に鍵が
    ハートリングのオブジェの下に鍵が