診断士の視点

インドネシアの福井県企業を訪問

2019.02.26 投稿峠岡 伸行

インドネシアの福井県企業を訪問 -海外視察研修を実施-

 福井県中小企業診断士協会と福井県経営者協会では、2月19日(火)~24日(日9の日程で、インドネシアに進出する福井県企業や日系企業を訪問する海外視察研修を実施し、大学生3名を含む14名が参加した。
 2億6千万人と世界第4位の人口を持ち、アセアンの中でもタイ、マレーシアと並び経済発展をとげ、近年消費市場としても注目を集めているインドネシアでは、現地法人の経営や現地特有の労務問題、消費市場の現場情報の収集を目的として福井県企業の海外工場や日系流通業を訪問した。
 主な視察訪問先は、以下の通り。
①ジェトロ・ジャカルタ事務所
②インドネシア日華化学(カラワン)
③セーレン・インドネシア(チカラン)
④イオンモールジャカルタガーデンシティ
 また、インドネシアに工場や事務所を持つ福井県企業の駐在員を囲んでの夕食懇談会も開催し、視察先企業に加え、(株)エイチアンドエフ、江守商事(株)の駐在員の方にもご参加いただき、企業経営だけでなく駐在員の生活などについても忌憚のない意見交換を行った。
 ジェトロでは、インドネシアの政治経済情勢や日本からの投資動向などについて伺うとともに、日華化学、セーレンでは、インドネシア進出の経緯や製造内容、労務管理面での取り組みなどについて説明いただいた後に、工場見学を行い、参加者からの質問にお応えいただくなど、予定時間を超えた訪問となった。
 訪問先でのヒアリングの内容を整理すると、
①インドネシアは、人口2億6,190万人で世界第4位の位置にあり、人口のうち15~64歳の人口層が半数以上と、人口ボーナス期が2030年まで続くなど消費市場の拡大が期待できる
②毎年200~300万人の労働力が新たに生まれるので、政府の目標はその人たちに仕事を生み出すこと
③イスラム教が88.6%、キリスト教が8.9%、ヒンズー教1.7%、仏教0.6%と儒教を加えた5つの宗教しか認められていない
④経済成長率は5~6%で、一人当たりGDPは3,876ドル、インフレ率は3%程度と安定している
⑤輸出では、原油とパーム油などの植物性油脂で36%を占め、近年は自動車の輸出が増加している
⑥輸入では、ガソリンなどの石油精製品が16%を占め、一般機械14%、電機機械11%、鉄鋼5%と、資源はあるものの精製施設や製鉄所がないことで、輸入に頼る状況が続いている
⑦政治的に安定していて、現在のジョコ大統領のインフラ整備への取組みは当面続く見通し
⑧年間世帯可処分所得35,000ドル以上の富裕層の割合が人口の6,000万人、5,000~35,000ドルの中間層が1.9億人と大多数を占め、自動車の購入、住宅の購入などが進んでいる
⑨日本からの投資では、自動車を始めバイク、建設機械、電機に加え、生活用品や食品・飲料の製造も行われ、最近では吉野家などの飲食店、ローソンなどのコンビニ、公文やヤマハなどの教育関係、ネット通販や銀行、保険などの進出が増加している
⑩第二次大戦後に残留した日本兵が、インドネシア独立の際に貢献したこともあり、日本には好意を持っている国民性で、日系の自動車メーカーのシェアが9割を超えることでも、親日国と証明される
 また、インドネシアの労務管理については、
①インドネシアは、17,000の島からなり、島ごとに言葉が異なるため、共通語としてインドネシア語(マレー語を参考に)を小学校から学んでいる(インドネシア語でのコミュニケーションが大事)
②イスラム教の宗教行事でラマダン(断食月)があるため、断食明けには1か月の賞与を払うことが法律で決められている
③最低賃金は、3万円を超えたところで、毎年インフレ率を参考に決められるが、昨年は8%の引き上げとなった
④失業率は5%台、離職率も低いのは、ワーカークラスで季節工になるとローンが組めないなどの影響があり、辞めにくい環境にあるため
⑤一方で、マネジメント層の人材は、3年程でキャリアアップのための転職をしていくので、引き止めのための給料UPは一時的な効果しかなく、給料以外の交渉スキルが会社側に求められる
⑥従業員の定着を高めるために、社員旅行や宗教行事への協力などコミュニケーションを深める取り組みを行っている
⑦採用面接では、チームで働けるか、嘘をついていないかをしっかり面談で見極める(3か月の見習期間が終わると簡単に解雇できない)
⑧ワーカークラスはジョブローテーションを行い、多能工化するよう心掛けているし、技術向上に向け日本での研修も取り入れていて、それがインセンティブになって定着にもつながっているのではないか
⑨インドネシア人は素直で、ワーカークラスは全般的に、お金には貪欲だがスキルアップには関心がない(中間管理職の人材が少ない)
 投資規制や独自の安全基準などビジネス参入では時間がかかるが、消費市場として注目を集めているインドネシアを、福井県の企業も注視していく必要があるのではないだろうか。

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