診断士の視点

日光東照宮と大谷資料館を訪問

2018.10.17 投稿峠岡 伸行

栃木・群馬の世界遺産・日本遺産を訪ねる~遺産を経済につなげる取り組み~

 今回は、世界遺産「日光東照宮」と栃木県宇都宮市にある大谷石の採掘場を活用した「大谷資料館」の訪問について紹介いたします。

東照宮だけではない「さすが日光」
 日光は、東照宮のある文化を感じる地域と中禅寺湖や華厳の滝などの自然を感じる地域があり、全体で日光の魅力を醸し出しています。
今回は、紅葉には少し早い時期だったこともあり、東照宮の参拝に加え、徳川家光のお墓のある輪王寺大猷院と三仏堂、二荒山神社を訪問しました。
 東照宮の見どころは、改修された「陽明門」をはじめ「見ざる、聞かざる、言わざる」の「三猿」や左甚五郎作と言われる「眠り猫」は皆さんご存じでしょうが、奥宮にある家康公のお墓まで登られた方は少ないのではないでしょうか。他にも、鳴竜で有名な薬師堂や五重塔なども見どころとなっていて、団体客には専門のガイドが案内をすることになっているようです。
個人客には、音声ガイドが500円で用意されていて、ガイドをお願いしなくても説明が受けられるよう工夫されています。
 東照宮の参道周辺には、日光山輪王寺があり、徳川家光のお墓がある大猷院は金箔で覆われた独特の建築が楽しめますし、三仏堂の金箔で覆われた大きな仏像もぜひ見ていただきたいものです。
 さすが日本有数の観光地と感じたのは、全ての施設で丁寧な説明が行われていることと、最後には必ずお守りや破魔矢など「一生もの」として購入を薦めているところです。
 人は「見る」だけでは心が動かされず、人による「説明」が加わって初めて「行動」につながるという原理をしっかりと踏まえた取り組みで、日光全体で徹底されている点に参加者一同深く“感動”したところです。
 一方で、観光地として気になった点がいくつかあり、一つは駐車場の位置と大きさです。
 東照宮の周辺には、市営と民営の駐車場が設置され400台以上が駐車できるようになっているのですが、私たちが訪問した10月の三連休の中日には、午前10時頃には全て満車になり、駐車場へ繋がる道路だけでなく、大通りまで大渋滞が発生し、せっかく電車やバスなどの公共交通を利用している観光客も、駅までのアクセスバスが動けない状況が生まれています。
 また、東照宮の近くに駐車場ができることで、門前町を歩く人が減り、東武日光駅から東照宮に向かう大通りも空き地が目立ち、さびしい状態になっていました。
 このような駐車場の設け方も、観光客の行動を左右する大きな要因であり、地域のお店にも大きな影響を与えるものとなっています。

大谷石の採掘場を観光地として再利用
 福井では笏谷石が有名ですが、関東では大谷石。
200以上の採掘場があった大谷地域ですが、現在は6カ所が操業中で、廃坑となった大谷石の採掘場を活用した観光施設としたのが「大谷資料館」です。
 この大谷石産業の歴史と地域の建築に使われた文化的な側面が評価され、今年5月に日本遺産として登録されています。
 入口の資料コーナーを出て、地下への階段を降りていくと徐々に冷気を感じ(中の温度は、年間を通して14℃ほど)、中に入ると巨大な地下空間に圧倒されます。
 坑内には、順路が設定され、切り出しの模様がわかる展示やオブジェが置かれ、照明による演出が行われています。
 また、テレビドラマやミュージックビデオの撮影に使われた写真パネルなども展示され、跡地利用の一つのモデルとして参考になる事例です。
 資料館の前には、「ROCKSIDE MARKET」というテラス席を備えたレストランとクラフトショップが設けられ、宇都宮の伝統工芸品が販売されるなど、見学だけでなく物販や飲食といった消費につなげる取り組みが行われています。

「ギョウザの街」宇都宮
 宇都宮市は、北関東で人口50万人を数える大都市で、アーケードが掛かるオリオン通り商店街には、ギョウザを始めとした多くの飲食店が並び、店頭の通りにテーブルを出して食事を楽しむ若者が多く見られ、このような街ぐるみの取り組みも、観光滞在客にとって「街の賑わい」として映るのではないでしょうか。