県外視察研修及び長崎県協会との情報交換会を開催（10月20日）

　福井県中小企業診断士協会の県外視察研修を10月20日（金）～22日（日）の2泊3日で4年ぶりに実施し、竹川会長をはじめ9名の会員が参加し、昨年、西九州新幹線が開業した長崎県と佐賀県を訪問しました。

長崎市では、長崎県中小企業診断士協会の前田愼一郎会長をはじめ11名の会員の皆さんと情報交換会、懇親会を開催し、特徴的な協会活動の紹介や個々の診断士活動、長崎ならではの離島の事業者支援などの話も聞かれ大いに盛り上がりました。

　今回の県外視察では、西九州新幹線が部分開業した長崎県の新幹線駅がある都市だけでなく県北となる佐世保市や平戸市、県南となる島原市や雲仙市などを分かれて訪問することで、長崎県全体での波及効果を把握するとともに、整備が進まない佐賀県内の各地域についても訪問することで、今後の福井県での新幹線開業対策に活かすことができないか、との目的をもっての訪問でした。

　長崎駅では、ＪＲ九州が開発する商業施設アミュプラザ長崎の新館がオープン間近となり、旧長崎駅舎跡を駅前広場に整備中で、周辺には出島メッセなどのコンベンション施設やヒルトンホテルの建設など集中投資が行われているほか、長崎県のプロサッカーやバスケットボールチームのホームグラウンドとなるジャパネット出資の複合スポーツ施設も建設中であり、新幹線開業を契機に巨大な民間投資が行われていたことが印象的でした。

　また、街なかでのマンション建設も進みつつあり、テレビＣＭでも分譲マンションの広告が多くみられるなど、これまで坂の街といわれていた海と山に囲まれて山肌に伸びていた長崎市街地の住み方も、街なかのマンション居住にシフトしているように感じられました。

　この海と山に囲まれ、細長い平地に路面電車やバスなどの交通インフラが整備されていることで、住民が自然にこのエリアに集まる仕掛けとなっていて、それが中心市街地にあるアーケード商店街の賑わいにもつながっているように感じられ、長崎県も人口減少で悩んでいて、街の賑わいの維持や生活支援機能の確保のためには、「集まって住むスタイル」が地方都市においても必要なのではないかとも感じました。

　このような地形的な特長は佐世保市の商店街でも見られ、訪問した当日はヨサコイ祭りが日本一長いと言われる商店街の中で行われていたこともあり、大勢の市民が集まっていて、商店街としての生き残りは個店の努力はもちろんですが、街の地形にも大きく関係しているのではないかと感じた訪問でした。

　一方で、新幹線の長崎開業から１年が経つ中で、新幹線駅がある地域以外では、「新幹線開業」といった文字を見かけることはほとんどなく、佐世保市は長崎市から100㎞近く離れていることもあって、全くというほど「新幹線開業」を感じない状況でした。

　ただ、佐世保を始めて訪れて感じたことは、ＪＲ駅と港、商業施設が近い距離にあって、人が集まるいろいろな機能が集約されているということで、新たな商業施設開発も行われたり、街なかの住宅をリノベーションして開業希望者のチャレンジショップに使われていたりして、ある程度コンパクトで魅力的な街になっていることでした。

在来線特急との乗換駅として新設された武雄温泉駅においても地元利用客向けの駐車場が高架下に広がり、駅周辺での民間投資があまり進んでいない状況も見られ、新幹線開業をどう地域として活かすかのアイデア不足（過剰な投資をしないことは賢明かもしれませんが）といったところではないでしょうか。

このように、新幹線開業では、駅があるエリアとそれ以外の地域の盛り上がりの差があり、観光やビジネスの目的地として明確な地域と知名度の低い地域との経済面での格差も生まれているようで、北陸新幹線の福井県内開業でも同じようなことが起こる可能性が高いと感じました。

　また、武雄温泉駅では、欧米やアジアの少人数グループの観光客が見られ、伊万里等の新幹線沿線以外では、九州外から車で訪問する観光客の姿も多く見られていたので、新幹線開業を契機にして各自治体が地域情報の発信を継続的に行ったことで、新たな観光スポットの発見や文化体験への関心が高まったとも見ることができます。

北陸新幹線福井県内開業に向けては、受け入れ態勢の整備（ハード整備だけでなくソフト的な充実）とともに、県内各地域の魅力を継続的に情報発信していく必要性を強く感じた長崎、佐賀の訪問でした。