北海道新幹線と市街地とのアクセス整備
9月22日~24日の2泊3日で、この3月末に北海道新幹線が開業した新函館北斗駅や函館市内の観光施設及び新青森駅並びに青森市内の観光施設を訪問したので、「交通」と「観光」の2回に分けてレポートします。
北海道新幹線の整備と時間短縮
北海道新幹線は、平成22年開業した新青森駅から、北海道札幌市までつなげる計画で、今年3月26日に新函館北斗駅までを部分開業し、平成42年度末には札幌まで開業する予定で整備が進められている。
今年開業した新青森―新函館北斗間は、約148kmを約1時間で結んでおり、東北地方と道南を結ぶ重要な交通手段となっている。
ちなみに、新函館北斗-札幌間は約212kmで、完成すればこちらも約1時間で結ばれることとなる。
新函館北斗駅に乗り入れる「はやぶさ」は、1日に東京駅始発10本に加え、新青森発、盛岡発、仙台発が早朝にそれぞれ1本ずつ運行され、東京駅とは最短で4時間2分、仙台駅とは2時間30分で結んでいる。
上りも東京行10本と夜の新青森、盛岡、仙台行が各1本と、1時間に1本程度が運行されている。
これを東京―函館間の飛行機と比較したのが右記の表で、空港への移動時間等を勘案しても、東京からは飛行機利用の方が、利便性が高いと言える。
先日、北海道新幹線の開業半年間の利用状況が発表されたが、上下線合計で、従来の鉄道利用者の2倍に増え、一日平均の乗車率もグリーン車、グランクラスを含めて39%とまずまずの状況ではないだろうか。
飛行機から鉄道に移動手段が移るのは、「3時間を切る場合」とよく言われるが、北陸新幹線の金沢開業では、最速で3時間47分から2時間28分と1時間19分の短縮となったことで乗客が新幹線にシフトし、小松-羽田便の減便が起こっているが、函館では大きな変化は生まれないのではないだろうか。
現在、JRの特急北斗が函館―札幌間を約4時間で結んでいるが、札幌まで開業すると大幅な時間短縮となり、函館空港と新千歳空港や丘珠空港を結ぶ近距離の航空路線はなくなる可能性が高くなるが、北海道内での行動範囲が広がることで、観光ルートの変化や道内での移動手段の変化が起こってくる可能性が高く、また飛行機便の割引率が低い夏場には新幹線利用が増えることで、北海道観光に追い風となると予想される。
北海道新幹線は「大谷選手」一色
今回、函館駅から新函館北斗駅を経由して、北海道新幹線に乗車し新青森まで移動したが、函館駅や新函館北斗駅の北海道新幹線PRの看板や幟には「日本ハムファイターズの大谷翔平選手」が起用され、多くの観光客が目をとめていた。新函館北斗駅では、顔出し看板も設置され、お子さん連れの家族が写真を撮る姿も見られた。
このようなイメージ戦略も、地元の関心を高め、利用者を増やすための重要な取組みではないだろうか。
鉄道でのアクセスと駐車場整備
新函館北斗駅も新青森駅も、それぞれ函館や青森の中心からは離れて造られた駅ではあるが、JRの在来線駅に併設されたことで、アクセス面では非常に便利な印象を受けた。
函館では、函館駅から新幹線の時刻に合わせアクセス快速が運行され、函館駅から10~19分で結ばれていて、乗継時間も11~17分が取られていて、新幹線到着から30分で函館の中心街に到着できる。
また、途中の五稜郭駅には、「パーク&トレイン」用立体駐車場が整備され、地元利用者の新幹線へのアクセス向上につなげている。
また、新函館北斗駅から函館空港へのアクセスバスも運行され、多様な移動に対応していることがうかがえた。
一方で、最も大きな驚きがあったのが、新函館北斗駅に隣接する北斗市営立体駐車場584台が無料で使用でき、更に駅周辺の区画整理の残地も平場の無料駐車場として開放され、新幹線の地元利用者に向けた利便性を高める取り組みが行われている。
現在は無料だが、札幌開業時には有料にできるようにゲートなどの設備も整えられていた。
新青森駅では、立体駐車場2カ所で1,035台整備されているが、街なかに近く、近くの国道沿いには郊外型専門店が多く立地し、新興住宅街が整備されていて地価も高いせいか、1日の駐車料は1,000円(30分100円)となっていて、周辺の民間駐車場で1日600円の看板が見られた。
新青森駅立体駐車場のホームページには空き台数の表示があって、利用者にとっては便利な情報提供がなされている。
北陸新幹線の金沢駅や富山駅を見ると、新幹線開業以前に市や民間による大規模な立体駐車場が整備されており、黒部宇奈月温泉駅では黒部市が615台の平面駐車場を、新高岡駅でも高岡市が807台の立体と平面を合わせた駐車場整備を行っているが、福井県内への新幹線延伸に向けては、駅周辺での駐車場整備が求められていくのではないだろうか。
郊外の観光施設と街なかをつなぐアクセス
今回、最後に縄文時代の「三内丸山遺跡」を訪問したが、青森駅からの移動で利用したのが観光周遊バスの「ねぶたん号」で、青森市の東側にある「棟方志功記念館」と西側にある「三内丸山遺跡」の間を、美術館や史跡、観光施設と新青森駅、青森駅を結びながら運行されている。
1日13便が運行され、1乗車200円、1日500円の運賃で利用でき、多くの観光客が利用している。
新幹線と市街地のアクセスだけでなく、観光施設を結ぶこのようなアクセス手段がしっかり確保されていることで、観光客も安心して訪れることができ、地域への満足度も高まるのではないだろうか。
函館でも、市内の元町・ベイエリアを周遊するルートバスや函館駅と五稜郭を結ぶバスも頻繁に運行され、市電とともに観光客の足として活用されている。
さらに函館市電では、電停には英語、中国語、韓国語の乗り方に関する説明表示板が設置され、電車の中には運転士に指さしで伝えられるよう案内板が料金箱の近くに配置されるなど、外国人観光客向けの配慮が随所に見られた。
来県者を迎える新幹線駅整備
今回の訪問では、新青森駅の見学時間が少なくあまり調査できていないが、新函館北斗駅の状況と併せて紹介したい。
隣接する立体駐車場の状況については先述の通りだが、それぞれの在来線からの乗り継ぎはスムーズで、新函館北斗駅では在来線ホームからエスカレーターで2階に上ったところに新幹線改札があり、ホームへは再度地上にもどる形、新青森駅でも同じように在来線から2階に上がったところに新幹線改札があり、ホームへは3階に上る形で、乗り換えができる。
新青森駅は、1階に土産物店や飲食ゾーンが整備され、新幹線待ちの観光客が多く利用しているが、一方で新函館北斗駅ではこのような施設が少なく、それぞれの駅の使われ方の違いが、施設整備にも大きく関わっているのかも知れない。
新青森駅は、JR青森駅から在来線で1駅、タクシーでも1,500円くらいの距離で、地元利用者は車で、観光客は観光バスや周遊バスを利用されることが多く、そのため土産物や飲食ゾーンを充実させたのではないだろうか。
一方で、新函館北斗駅は、大観光地の函館から新幹線への乗り継ぎの利便性を最大限に考えたため、駅での滞在時間が少ないことを想定して、敢えて飲食ゾーンや土産物店のスペースを最小に抑えた印象がある。
そのためかどうかはわからないが、新函館北斗駅の西口広場では土日限定の地元の食を中心とした屋台を揃えたイベント広場が設けられていたが、訪問した日はあいにくの雨模様で、利用客はまばらであった。
新幹線の活用に向けたアクセス整備へ
どうしても、「新幹線対策」というと、いかに観光客を増やすかが中心となり、交通については、観光やビジネスでの来県客の利便性が第一とされてきた。
しかし、新幹線の開業により、これまで以上に地元利用者が増えることが予想され、車社会の福井県では駅に隣接した駐車場の整備が最も求められる対策ではないだろうか。
当然、3セク化される並行在来線では、新幹線ダイヤに合わせたアクセス快速などの運行が、芦原温泉駅から敦賀駅までの間で必要になってくるが、県内においては東西移動の公共交通が少ないので、在来線を補完するアクセスバスの運行が必要となる。
また、今後に向けては、旅行者の観光行動や県民の旅行行動などの調査を行いながら、必要な施設整備や活用されるアクセス手段などの整備につなげていく必要があるのではないだろうか。